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WINE

初夏にも味わいたいワイン「ニュー・チャプター」。そのユニークさを堪能せよ

文/山田 靖

すでに夏日が記録されてもいるが、昨年同様に暑い暑い猛暑の夏がそこまで迫ってきている。今はまだ初夏の兆しを迎え、夕方になると暑さも和らぎ、心持ち涼しく感じられる。クーラーはつけなくともやり過ごせそうな夕方。そんなときは仕事も早めに切り上げてワインを開けたくなります……よねッ! 赤色の重たいワインはさすがに敬遠されがちなこの時期。絶対オススメの1本は、オーストリアワイン界を代表する「レンツ・モーザー」と若手醸造家としても注目される「マルクス・フーバー」が、オーストリアを代表する品種、グリューナー・ヴェルトリーナー(以下:GV)を世界的に広めるために始めたプロジェクトから産まれたワイン「ニュー チャプター」だ。
「ニュー・チャプター」が産まれるまでについては以前にも記事を掲載しているが、簡単におさらいを。

レンツ・モーザー(左)とマルクス・フーバー(右)

醸造家のレンツ・モーザーさんはオーストリアを代表する醸造家であり、ニュー・チャプター以外のワインのプロデュースも行っている人物。また、特に“GV”という品種との関わりも深い。GVはオーストリア原産にして、オーストリア国内で最も生産量が多い白ワインブドウ。オーストリア全域での栽培が始まったのは1950年代。そして、彼の祖父が「ハイカルチャー仕立て」(※高い垣根立てにすることで、樹勢が強く少収量気味だったGVの栽培を向上させた)を開発したことで生産が拡大した。いわばGVの育ての親であり、彼はその直系だ。そしてもう一人のパートナーのマルクス・フーバーは、トライゼンタールで10世代続く栽培醸造家。2015年には、ドイツ専門誌で最優秀醸造家に選ばれており、名実ともにオーストリアのトップ10生産者の一人としての地位を確立してる人物だ。この最強にして最良の二人がタッグを組み造りだしたのが「ニュー・チャプター」なのだ。

GVという品種のワインは、日本ではまだ馴染みの薄い品種だ。それもそのはず、オーストリアやドイツでの人気が非常に高く、生産量の90%近くはその周辺国に行き渡ってしまい日本に入ってくるワイン自体少ない。そのテイストは、一般的にハーブやホワイトペッパーのような香りで、爽やかな酸味を引き出し高い糖度を実現することもできる品種であり、さまざまなスタイルのワインを造ることができるのだけれど、非常に豊満なスタイルのものが多いのが特徴だ。酸味を苦手だと感じるひとにとっては、飲み疲れしてしまうワインという一面もあるかもしれない。

「ニュー・チャプター」はそこを大きく変化させた。まさにその名の通りGVの「新章(ニュー・チャプター)」なのである。彼らが新章にむけて行ったことは、世界的に人気があり認められている白ワイン7種類と比較、その理由と味わいを求め1つの仮定を導き出した(レンツ・モーザーさんはモンダヴィのヨーロッパ担当のマーケティング部門というキャリアもあり、醸造学だけではなく市場観察力にも優れている)、それは「パワフルだけれど豊満ではない」ワインに行き着いたことだ。
今回、2022年ヴィンテージを携えてレンツ・モーザーさんは奥様のマリオンさんと来日してくれた。そのニュー・チャプターについて彼はこう語ってくれた。


「このワインで表現したかったのはオーストリアのワインをGVで再定義すること。それによって、ビジネスとしてはこのワインのファンが常に付いているようにしなければならない。そのために何をしなければならないかというと、お客さまを説得させられるクオリティのワインでなければならない。1本お買いいただいたら、2本目3本目と買いたくなる、次のヴィンテージがでれば、また素晴らしいワインとなっているなど、購買意欲を説得できるワイン、それが私たちのゴールの1つでもあります。そのためのクオリティに対して私は貢献していきたいと思っています。クオリティという点で大切なのは“ユニークさ”が重要であると思います。このワインにとってのユニークさとは 、“エレガンス”と“フィネス”そして今の世の中では“重くない”こと。また、売る側はときに“ミステリアス”さを重要視することもあるけれど、私はそうは思わなく、ごく一般のワインラバーにとって身近な存在でいつでも飲みたくなるワインであるべきだと思っています。そのためには3つの要素が必要です。1、GVと言う品種はドイツ語圏で90%消費されるゆえ、他の国に消費してもらえるものにしなければならない。2、いくつもワインを造らず、1つだけのワインを造る。そして3つ目は“明日(未来)のグリューナーを今日飲んでもらう”。それを実現させていくことが、国際マーケットに出ていくことに繋がると思っています」

レンツ・モーザーさんのGV愛、ニュー・チャプターへの半端ないこだわりだけでもこのワインが本物であることがビシビシ伝わるけれど、一口飲んでそれは確信に変わります。

今回の奥様のマリオンさん(左)も同行しての来日だった。
「ニュー・チャプター」というワイン名を命名したのは奥様。

昔のボルドーで使われていたボトルの形を採用、
イエローを主体にした色使いもオーストリアワインではあまり見かけない。
セパージュはGVにリースリング、ムスカテル、ソーヴィニヨン・ブラン、など数種をわずかにブレンドしている。

今回試飲したのは2022年だけではなく、2020年、2021年の3ヴィンテージ2を垂直試飲するという貴重な機会でした。また、日本料理とのペアリグも体験できました。レンツ・モーザーさん自身も日本食との相性の良さを再確認したといいます。この試飲セミナーでも供された、天麩羅や魚介のお刺身など、このワインが持つ美味しい酸味、彼が言うところの「複雑でエレガンスとフィネスを感じさせる“パワフルだが豊満過ぎないスタイル”」との相性がピッタリだった。


レンツ・モーザーの熱い思いがこもった「ニュー・チャプター」。季節のシチュエーションならば、勝手を書くが「夕涼みで外の空気を感じながら飲む」のはとても美味しく気持ちいい、1本と断言しよう。そしてさらなるオススメとして、ぜひマグナムで飲んでほしい。このワインの持つ個性的な美味しさをさらに味わえ、明日のグリューナー・ヴェルトリーナを今日いただくという意味を感覚的に理解でき、「ニュー・チャプター」のファンになってしまうこと請け合いなワインなのである! これ結論。

※ここまで書いて申し訳ない2021年ヴィンテージのマグナムは終売とのこと。
2022ヴィンテージマグナムが発売されたら是非ともお試しを。
また2022年ヴィンテージの日本発売は秋頃を予定している。


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山田_yamada 靖_yasushi

Why not?マガジン編集長。長くオールドメディアで編集を担当して得たものをデジタルメディアで形造りたい。座右の銘は「立って半畳、寝て一畳」。猫馬鹿。年一でインドネシア・バリのバカンスはもはやルーティン。

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