5th glass of wine
「2022久住ロゼCatWalk」
吾輩は猫である。もうワイン名はある。
小説や映画のみならず、ワインにまで吾輩を描くなんて、人間というものは、なんと猫好きなのだろうか?
名作&名ワインには猫がいる
『吾輩は猫である』(夏目漱石)、『魔女の宅急便』(角野栄子)、『ティファニーで朝食を』(トルーマン・カポーティ)。名作にはよく猫が登場します。いつだって、猫たちは主人公のココロを描写して、ストーリーに深みを与えてきました。
さて小説や映画だけでなく、名ワインにも猫が登場するのをご存じでしょうか。フランスのレオン・ハイツマンのレ・カッツ、ポルトガル北部のガタオ、北海道の農楽蔵、山梨市の三養醸造、八ヶ岳のドメーヌ・ミエ・イケノ………などなど。ラベルに描かれた猫たちには、1つ1つストーリーが込められています。
大分の猫ワイン
久住ワイナリー(大分県竹田市)の「Cat Walk」も名猫ワインのうちの1つです。もともと東京で経営学を専攻し、スタイリストを目指していた土持さん。ところが、家族に頼まれたことがきっかけで、突然ワイン造りを目指すことになったのです。
ここで、湧き上がる疑問は、「未経験者でも、いきなりワインは仕込めるものなのか?」。土持さんは、Zoomや電話を駆使して、7~8人の専門家や醸造家に質問し続け、愚直にワイン造りに実践したのです。
Comme un chat(猫のような柔軟性)
土持さんが、素晴らしいのは猫のような柔軟性があること。「情報を集めるのに時間をかけるのはナンセンス。恥もかき捨てでひたすら質問しました。ときには、遅い時間に電話をかけて怒られることも。結果、1つのワイナリーで2~3年学ぶよりも早かったのです」と土持さんは振り返ります。
ときには周囲から、「ダメ」と言われることも、あえてやってみることもありました。失敗(?)は成功の母なり。こうして、誰のマネでもない土持さんのワインを造ることができるようになったのです。
猫の手も借りたいほど
「初年度はきつかった」とは土持さんの本音。未経験からのスタート、責任と重圧、労働量も…実際、選果(収穫後、良いブドウとそうでないものを分ける大切な作業)と、瓶詰め作業以外の作業は、全て土持さんがひとりで行います。
そのころは、ワイナリーで1日24時間働くこともありました。仕込みのピーク時は寝袋生活。まさに猫の手も借りたい状態です。
レオンとゾロとの出会い
そんな土持さんを見守っていたのが、猫のレオンとゾロ。ワイナリー生まれの猫たちです。「冬は寒くてかわいそう」と、畑で生まれた猫たちは、土持さんが運命を感じて引き取り、ワイナリーの看板猫となった2匹なのです。
月夜の光る夜、窓の上から、土持さんが仕込む姿を見おろしたり、ときには寝袋で一緒に寝たり…そんな猫たちに励まされながら、仕込んだのが、「Cat Walk(綱渡り)」です。まさに、土持さんの初年度のワイン造りは、綱渡りのようだったといいます。
ランウェイを歩くモデルのように
さて、「Cat Walk」には、もう1つ意味があるのをご存知でしょうか。
モデルがランウェイをかっこよく歩くこと。ギリギリの綱渡りのようなワインが、いつか華々しい舞台に羽ばたけたら、といった意味がこめられているのです。
そして、その夢はすぐに叶えられることになったのです。2023年の日本ワインコンクールで、「Cat Walkシリーズ」から金賞2つ(うち1つは部門最高賞)と銀賞を取ることができたのですから。まさに、レオンとゾロは久住ワイナリーの「招き猫」なのです。
これからも猫ワイン
優雅、媚びない高貴さ、神秘的、しなやか、やわらかい…名ワインと猫の表現がシンクロするのは偶然でしょうか。いえ偶然ではありません。これらからも、猫たちは造り手に不思議なパワーとインスピレーションを与えて続けることでしょう。
2022久住ロゼCatWalk
左の猫がレオン、右がゾロ。目にも美しい桜色。アセロラ、モモ、スミレの香り。猫のようなやわらかな果実味と爽やかな酸が良いバランス。
2023年日本ワインコンクール銀賞受賞
原料葡萄:シャルドネとピノノワールを主体にした久住自社農園葡萄のフィールドブレンド
希望小売価格:3,780円(税込)
猫好きのあなたに“ほっこり笑顔になる”サービスカット