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WINE

紫貴あきの「今夜」ワインが飲みたくなるはなし 今、声を大きくして叫びたいのが「呑みまっし、石川のワイン」

文/紫貴あき

6th glass of wine
「相承 キュヴェ・メモリアル」

石川県の方言は独特です。「食べまっし」「来まっし」「見まっし」。この語尾によく使われる「まっし」は、「~したらどう?」と相手に何かすすめるときに使います。

そして、今、声を大きくして叫びたいのが「呑みまっし、石川のワイン」です。

浜っ子が石川でつくるワイン

「Heidee Winery(ハイディ ワイナリー)」は、石川県輪島市門前町に位置するワイナリーです。2011年、横浜出身の高作正樹さんが立ち上げました。

なぜ、浜っ子が石川にワイナリーをつくったのか。そのルーツは学生時代のスイス留学にあります。畑、ワイナリー、ツーリズム、郷土料理が一体化したヨーロッパでの体験………日本海を臨む絶景に目にしたとき、「海ワイン」のインスピレーションが湧いたのです。たしかに、石川はクロマグロ、ハゼ、クロダイが名産で、名門寿司屋が軒を連ねるばかりか、廻っている寿司屋(!?)までおいしいのです。

海ワインの生まれる場所

石川というと降雪量が多いとイメージされがちですが、対馬暖流が流れている影響で、海沿いは実は降雪が少ないのが特徴です。
人気の品種が白ブドウ「アルバリーニョ」。本家本元はスペイン北西部の海沿いで、果皮が厚いため、カビ病にかかりにくい特性があります。海沿いに植えられているせいか、塩分をわずかに含む海風がブドウに影響し、ワインにするとなぜか後味にナトリウムぽっさや、磯っぽさを感じる味わいになります。まさに海の幸にぴったりのワインです。

2024.1.1 16:10地震

地震が起きたのは、高作さんが一人で棚卸作業をしているとき。経験したことのないような激しい揺れの中、机の下で身を守り、その後、外へ避難しました。高台に上がってくる人たちを、安全な場所へ誘導しながら、なんとか津波から逃れたのです。

周囲の住宅のほとんどが半壊、全壊するなか、スパークリングワインが30本ほど割れ、奇跡的に25,000本のワインは瓶に細かい傷が入りながらも守られたのです。

試練

いまだ断水状態は続いています。ワインづくりには、想像以上の水が必要です。瓶や醸造器具の洗浄、葉ダニなどを防ぐため、水に専門の溶液を混ぜてスプレーする防除という作業…などなど、あげたらキリがありません(評論家ジャンシス・ロビンソンは、出来上がるワインの1.5倍の水が必要とまで言っています)。

3月に行う剪定(前年の枝を切り落とす作業のこと)も課題です。畑までの道が突起、ひび割れ、段差、地崩れを起こし、移動することさえ至難の業だからです。剪定は、畑仕事の中でも高いレベルが求められるため、気軽に周囲にお願いできる作業ではありません。


北陸の絆

 そのような中、「トラックに水を積んでもっていきますよ」「ハサミをもって剪定に駆けつけますよ」と手を差し伸べてくれているのが、Says Farm(富山県氷見市)の田向俊さんです。高作さんと年が近く、普段から情報交換する、親しい間柄です。Says Farmもこの地震で、断水を経験したのです。自分たちも辛い経験をしたからこそ、他者の痛みを想像することができるのでしょう。

隣り合う県といっても、その距離約85キロメートル、整った道なら車で約2時間、今は道の状態も悪く決して容易なことではありません。「言うは易し、行うは難し」、このような状況でも動こうとしてくれている田向さん。まさに固く結ばれた「北陸の絆」なのです。

一歩ずつ

「自宅が半壊、全壊したスタッフもいます。避難生活のなかでも、残されたワインの発送を社員一丸となって行っていくことが、心の平安になります」と高作さん。必ず復興できると信じて、わたしたちも石川のワインを呑んで応援したいものです。

がんばりまっし石川!がんばりまっしハイディワイナリー!

ハイディのワインが買える店
HANA Surprise(金沢駅西口すぐ)
石川県金沢市広岡1丁目5-3 クロスゲート内

オンラインショップは下記をタップ
https://heidee-winery.shop-pro.jp/

ブドウ畑での剪定などのボランティア募集中
「剪定」は経験者のみとなってしまいますが、現在、畑作業を手伝えるボランティアを募集しています。
「枝払い」という、剪定後の残った枝を手やハサミで取り除く作業は、未経験の方でも手伝うことができます。
申込は3月7日まで、詳細は下記をタップ
ブドウ畑での剪定などのボランティア募集中

相承 キュヴェ・メモリアル

セミヨン82%、アルバリーニョ18%

やや時間はかかったが無事に筆者のもとに届いた。中には高作さんからの手紙も入っている。金柑、花梨、オレンジの花のアロマ。凝縮した果実味と生き生きとした酸が良いバランス。後味にわずかに塩味を感じる。ノドグロの握りに合わせたい。
※ボトル画像左

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紫貴あき

ソムリエ | ワイン講師 日本最大級ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の人気講師。 丁寧なレッスンは、 初心者から上級者まで わかりやすいと評判。 著書に『ゼロからスタート!紫貴あきのソムリエ 試験』( KADOKAWA)。この夏には、かんき社から『ワイン図鑑』を出版予定。

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