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文/紫貴あき
10th glass of wine
「サルヴァーノ ロエロ・アルネイス」
酢のものが食べられない………そんな酸味が苦手なアナタに朗報です。ヴィオニエ、ゲヴェルツトラミネールだけが酸が穏やかな品種ではありません。あのイタリアにも酸っぱくない白ブドウ品種があるのですから。イタリアワインに詳しいワインジャーナリスト宮嶋勲さんにお話をお伺いしました。
宮嶋勲さんと筆者
酸っぱい、苦い、イタリア品種
イタリアの白ブドウ品種といえば、酸っぱくて、苦い………だから苦手という人もいることでしょう。イタリアにそういった品種が多い理由として、「昔は醸造技術が未熟で、酸が高くて、苦いということは微生物学的に優位だったから」と宮嶋さんは語ります。
そんな中、酸の高すぎないブドウ品種が注目を集めているのです。その名も「アルネイス」。ピエモンテ州の南西部に位置するロエロ丘陵原産の品種です。15世紀にはロエロの文献に記されていたものの、脚光を浴びるようになったのは、実に最近のことなのです。
生産者泣かせのアルネイス
アルネイスという名前は、現地の言葉で「気難しい性質」という意味に由来します。確かに、アルネイスは収穫量が不安定で、ブドウが成熟する過程であっという間に酸が落ちてしまうため「収穫の窓」が極端に狭いのです。そんなアルネイスは、ずばり栽培者にとって扱いにくい品種。おまけに酸が低いため酸化しやすく、醸造技術が発達していなかった1960年代ごろには、次第に見放され、絶滅寸前まで追いやられたのです。
救世主参上!
アルネイスの復興に一役買ったのが、バローロとバルバレスコの名手ブルーノ・ジャコーザとヴィエッティです。1970年代、ロエロの農家をまわって、畑の片隅の残っていたアルネイスの枝で分けてもらい、挿し木(元の植物から枝を切り取り、その切り取った部分を土や水に植えて新しい植物を育てる方法)で少しずつ増やしていったのです。なぜこの気難しいブドウ品種がわずかに残されていたのか。理由は酸っぱすぎないために、引き抜かれずに食用ブドウとして育てられていたのです。
時代がアルネイスを求めている
ブルーノ・ジャコーザとヴィエッティに加えて、数年後にはチェレットがアルネイス復興運動に加わりました。天才たちのつくる高品質のアルネイスは瞬く間に脚光を浴びました。「このころ世界的にシャルドネが大人気。酸っぱくないワインはまさにポストシャルドネとして注目されるようになったのです」と宮嶋さんは人気になった背景を語ります。
宮嶋勲さんにその魅力を尋ねると、「酢の物が食べられないおっさんでも飲めるでしょ」とユーモラスに笑います。確かに、味の素社が行ったリサーチ※によると女性よりも男性の方が酸味を苦手にしている人が多いのだとか。
まだ、はじまったばかり
アルネイスを使ったロエロDOCGは2004年に認定されたばかり。原産地呼称としてはまだ若く、まだ進化の途中といってもいいでしょう。そして、この酸っぱくない白ブドウ品種は、きっとこれからもわたしたちに新たなイタリアワインの魅力を教えてくれることでしょう。
※出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21696440Z20C17A9MM0000/
サルヴァーノ
サルヴァーノ ロエロ・アルネイス 2020
品種/アルネイス100%
希望小売価格/6,600円(税抜)
1930年代からワイン造りをはじめたサルヴァーノ社。バローロ、バルバレスコの他、ロエロにもアルネイスの畑も所有しています。ベルガモット、白い花の香り、酸は強すぎずゆったりとした印象です。
輸入元・英和商事の「サルヴァーノ ロエロ・アルネイス 2020」webサイトはココをタップ