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「シャブリ」への確かな導き、「良書」が完成

文/山田 靖

年末年始はテレビも同じようなプログラムだし、本を買い込んでじっくりと読書でも、なんてインテリゲンチャな方にぜひリストに入れてほしい書籍を紹介したいと思う。
その書籍とはウォンズパブリシングリミテッド社からこの11月15日に発売されたばかりの「CHABLIS(シャブリ)~日本ワイン市場を俯瞰する~」だ。


分類としては「専門書」だ。ワイン業界に携わる人に向けて書かれている。ので、シャブリというワインは知っているし飲んだことも多分あるが、「シャブリ」って産地? 品種?と疑問を持つワイン初心者に向けた内容にはなっていない。が、それでも一読を心からお勧めする。
標題の「シャブリ」は、世界でも日本でも有名すぎる辛口白ワインの代表格。シャブリを名乗るワインは、全て「フランス・シャブリ地方産シャルドネ」を用いた辛口仕上げのスティルワイン。
筆者はシャブリと聞いて「プティシャブリ」ならコスパがよくて手にとりやすい、「プルミエ・シャブリ」はプティシャブリやシャブリより高級で「クリマ」の多様性が表現されたライン、価格は以外とリーズナブルという知識程度である。その程度の私が読んでみて、理解がとどかないパートもあったが、ワイン本にありがちな産地、生産者、ワイン紹介でシャブリを解き明かすのでは無く、もちろん産地特性を深く取材したうえで、ときに科学的に、ときにジャーナリストの目線で、ときに実践的に、これから日本でシャブリというワインをどう扱っていくのが良いかを「実学」として解き明かしている一冊なのだ。
著者の大橋健一さんは、日本で唯一マスター・オブ・ワインの学位取得者であり、さまざまなワインマーケティングも行っているワイン業界では言わずと知れた人物。この書籍の編集者が書き記した編集後記は「私が世界一好きなワインはシャブリです」という大橋健一氏の言葉から始まっている。そう、この本はシャブリのマーケティングに収れんされた本だけではなく、「シャブリ愛」が根底にある一冊なのである。その想いが、ワインに詳しくない者が読んでも読み進めていけるポイントなのかもしれない。

内容は「シャブリの定義」に始まり、歴史、土壌、クリマ、栽培、醸造、食文化、ペアリングと「シャブリ使い」として独自性のある日本のワイン市場を築き上げるためのヒントがこれでもかと詰まっている。明快な答えとしての結びはないが、読んだ我々がこの俯瞰図をいかに日本の食文化や食のシーンに落とし込んでいくのか委ねられているのではないかと思う。
個人的には、第10章の香味や表現について、特に「ミネラリティ」についての考察や、第12章の「シャブリご当地の食文化」に書かれているようなある種文化人類学的なアプローチが大変興味深かった。とりわけワインに興味が低い読者にも、食文化の現代的なアプローチは多くの興味を喚起させてくれる一冊であると書き記しておく。
また、筆者の力量だけではなく、編集者として伴走された方の力量があってこそこの書籍を成功たらしめていることも付け加えておきたい。クリエイティブへの私の最大級の賛辞「神は細部に宿る」、この書籍もまたそうである。

ビジュアル面も充実した構成内容になっている。

「CHABLIS(シャブリ)~日本ワイン市場を俯瞰する~」
ウォンズパブリシングリミテッド刊
定価/4,400円(税込)

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山田_yamada 靖_yasushi

Why not?マガジン編集長。長くオールドメディアで編集を担当して得たものをデジタルメディアで形造りたい。座右の銘は「立って半畳、寝て一畳」。猫馬鹿。年一でインドネシア・バリのバカンスはもはやルーティン。

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