もう体験できないかもしれない“唐澤流揚げ技劇場”をぜひ味わって。

以前、取材に伺った時に撮影した「フグの刺身と白子の天麩羅」
先週の贅沢飯は以前、ワイン雑誌で取材させていただいた西麻布の老舗天麩羅「からさわ」が6月末で閉店してしまうと聞き、不義理ばかりしてもいて知り合いと行ってきました。 ご主人の唐澤隆さんはホテルオークラ「和食堂 山里」で33年間腕を磨き、2005年西麻布にてんぷら店「からさわ」を開店。長い経験で培った目利き力で厳選した素材と、最高に美味な瞬間を鋭くとらえる揚げの技で、食通のあいだでも評価の高いお店。また、自ら焼き上げた器で料理を供するほどの趣味人でもあるんです。あと、バイクをこよなく愛するライダーでもあります。

お店のあるロケーションは再開発が進行する六本木通りの笄坂付近。今は賑やかになってしまった霞町では感じられなくなった静寂とアダルティナーな六本木通りの笄坂。ここもあと数ヶ月で見える風景もがらりと変わってしまうのでしょう。その大通りから一本奥に入るとぽつんと「天麩羅 からさわ」の看板と暖簾がふわりとお客を呼びこんでれます。
取材させていただいたのはもう5年以上前(申しわけ無いことにそれくらい御無沙汰しました、すみません)ですが、ここは何も変わっていません。もちろん店内も唐澤さんが焼き上げた器もなにげなく置いてあるその風景も変わらず、なんだかとても嬉しくて、取材時の記憶がすぐに蘇りました。その時はシャンパンと天麩羅と言うテーマで知り合いのライターからこの「からさわ」さんが絶対オススメと聞いて、なんの伝もなく、突然電話での取材依頼という失礼にも快諾いただけました。実は来日する多くのシャンパーニュグランメゾン醸造家たちが目を輝かせてそのマリアージュ体験と感動を語る日本料理は「てんぷら」と答える方が多い、鉄板なんです。このときはお店のワインにオンリストされていない「パイパー・エドシック エッセンシエル エクストラ ブリュット」を持ち込み、唐澤さんにマリアージュを提案いただきました。
取材時は冬前だったので、ふぐ調理の職人としての経験を持つ唐澤さんならではの、天然トラフグの刺身と白子のてんぷら。上品な味わいの刺身にクリーミーな白子の風味のコントラストはシャンパーニュの透明感のある酸が刺身の風味を引き立たせ、口中で軽やかに跳ねる衣の食感や白子の旨みも滑らかな泡立ちと複雑な味わいで受け止め、さらに、ミルキーなコクを持つ牡蠣やミネラルを感じる根菜、緻密な肉質の蝦夷アワビへと“唐澤流揚げ技劇場”は展開したことを覚えています。そのときの唐澤さんの
「一品ごとにクリアな味覚で味わうことができるように、キレの良さと発泡の刺激はポイント。ただし、口中を洗い流してリセットするだけではつまらない。シャンパーニュは繊細ながらも複雑な香りと旨みを秘めているので、それぞれの素材の味わいを生かし、広げてくれて、1本で通せるのがいいですね」とのコメントも真髄をついていたことも思いだしました。

ご主人の唐澤隆さん(取材時)
今回は初夏前だったので、アスパラ等野菜、稚鮎がとても素晴らしく“唐澤流揚げ技劇場”は健在です。知り合いが今回持ち込んだワインはシャンパーニュではなく南アフリカの「ケン・フォレスター」。ご存知のかたもいらっしゃるかと思いますが、世界基準の高品質ワインでミスター・シュナンブランと呼ばれるワイン。フレッシュな果実味とスッキリした酸がピッタリよりそってくれました。やはり素敵で素晴らしい一夜になりました。最初にも書きましたが「からさわ」さんは6月末で閉店してしまいます。FB等でも唐澤さん自身
「コロナ禍も治まりつつあり、海外からもお馴染みのお客様が戻ってきてくださっています。
最近は食材の準備やお客様への対応で急に忙しくなり、利き手の腱鞘炎が悪化してしまい、自分の思う様な仕事が出来なくなってしまいました。
そのため、しばらく休養し、治療に専念することにしました。この度、天婦羅からさわは、6月末をもって閉店させていただくことになりました。」(原文抜粋)
と、至極残念ですが、再開は無いとは言えないとの唐澤さんのお言葉を書き記して、快気をお祈りしたいと思います。まずはお疲れ様でした。
6月末まで、お昼も夜も営業されます。皆さん、ぜひ足を運んで「唐澤流揚げ技劇場」を堪能してください。予約必須ね!!




天婦羅からさわ
東京都港区西麻布4-15-18高木ビル1F
Tel.03-6418-7878
営業時間:ランチ11:30~14:00、ディナー17:30~21:30
休日:水曜