文/島 悠里 写真/Romain Berthiot、柳忠之
This article is about Champagne Krug’s new winery in Ambonnay, “Joseph” and its flagship “Grande Cuvée”.
セラーマスターのジュリー・カヴィル(Julie Cavil)さん
トップクラスのシャンパーニュメゾンは、伝統を大事にしながら、時代の先に目を向け変革を続けていて、これがシャンパーニュの強みなのだと、現地を訪れるたびに感じます。
1843年設立のメゾン、クリュッグ(Krug)はその代表格の一つ。シャンパーニュの中心都市ランスを拠点とするメゾンですが、今年、少し離れたアンボネイ村に創業者「ヨーゼフ」の名を付けた新しいワイナリーが、構想から7年の歳月を経て完成しました。
4月下旬にプレスへのお披露目がなされ、公開されたばかりの新ワイナリーを見学したのですが、まずは、隣接するブドウ畑に溶け込むようなモダンなデザインの大きな建物に目を奪われました。そして、今の時代を象徴するかのように、様々な点でサステナビリティを配慮して建築されたワイナリーで、機能的にも、最新の醸造設備と技術が盛り込まれ、これまで以上に高品質で正確なワインが生み出されることを予感させるものでした。
クリュッグのフラッグシップである「グランド・キュヴェ(Grande Cuvée)」は、シャンパーニュラヴァーなら一度と言わず、何度でも味わいたい、憧れのシャンパーニュでしょう。このキュヴェの素晴らしいところは、どのエディションを飲んでも、いつ開けても、安定した品質と味わいが期待できるところ。
グランド・キュヴェを飲むたびに、まさに、創業者ヨーゼフ・クリュッグが信念とした、「その年の天候の変化に左右されず、毎年、最高品質のシャンパーニュを世に送り出す」ことが、このキュヴェ誕生の背景になっていることを思い出します。
これを実現するために、グランド・キュヴェは、毎年、最新の収穫年をベースに、その年の特徴を考慮し、過去のリザーヴワインを精巧にブレンドして造られます。たとえば、今年リリースの172エディションは、2016年のベースワインを中心に、11の異なる年の146種類ものワインをブレンドして、最終的にピノ・ノワール44%、シャルドネ36%、ムニエ20%の割合で造られました。味わってみると、溌剌としたフレッシュさと熟成からくる奥深さ、口当たりのよい軽やかさと重層的なフレーバーの複雑さという、一見相反する要素が見事に調和されています。
今回の訪問では、最新の収穫年である2023年のベースワインを中心に、100種類を超えるワインから成るブレンドの完成品とともに、それを構成するパーツとなる各ワインを試飲する機会がありました。ブレンディング(アッサンブラージュ)は、シャンパーニュ造りの要の工程で、セラーマスター(最高醸造責任者)の腕の見せどころですが、この試飲を通じて、クリュッグが創業以来培って何世代にもわたって継承してきた経験と知見、そしてサヴォアフェール(匠の技)があってこそ、毎年、この素晴らしいグランド・キュヴェが誕生しているのだと実感しました。
ちなみに、「グランド・キュヴェ」のラベルには、エディション番号が記載されていて、これにより、どの年のベースワインで造られたものかが一目でわかるようになっています。また、裏ラベルにあるID番号を、ウェブサイトやアプリに入れると、そのエディションの詳細な情報がわかります。
このように緻密に造られたグランド・キュヴェですが、その背景にある創業者の信念や、醸造家たちのたゆまない努力に想いを馳せると、もっと楽しめること間違いなしです。
問い合わせ先:MHD モエ ヘネシー ディアジオ
https://www.krug.com/jp