マスダンジル(Mas d’en Gil)の4世代目マルタさん
文・写真/島 悠里
Enjoyed the press lunch paired with great wines by Mas d’en Gil from Priorat, Spain.
「プリオラート(Priorat)」は、これまで訪れた数々のワイン産地の中でも印象的だった場所の一つです。
スペイン北東部のカタルーニャ州にあり、沿岸のバルセロナから南西に約100キロほど内陸に入って行くのですが、山で隔てられたエリアにあり、素朴でゆっくりとした空気が流れている独特の雰囲気がありました。
ブドウ畑の多くは、急勾配の斜面にあり、リコレッリャと呼ばれるスレートの土壌で、雨が少なく乾燥しているこの地からは凝縮された成熟度の高いブドウが収穫されます。ブドウ栽培の歴史は古いものの、長い間忘れ去られていた土地だったのですが、1989年から志あるワイン醸造家たちがこの地を復活させ、今では、スペインのダイナミックなワイン産地として名を馳せています。
現地から持ってきてくださったリコレッリャ
そんなプリオラートにある優良な家族経営の造り手、マス・ダン・ジル(Mas d’en Gil)のマルタさんからお話を伺う機会がありました。2006年にブルゴーニュのビオディナミの偉大なワインを試飲したことがきっかけで、自分たちの畑でもビオディナミ栽培を始めたとのこと。「農法を変えてから、花が咲くような、より表現豊かなワインになっています」とマルタさんは言います。
マルタさんの解説とともに、ザ・リッツ・カールトン東京のビストロノミー「タワーズ」のフランス料理に合わせて、各ワインを試飲しました。まず、白は、「コマ・ブランカ(Coma Blanca)2017」と「コマ・アルタ(Coma Alta) 2010」。前者は、口に含むと、パイナップルやマンゴーのエキゾチックでフレッシュな果実が広がります。両者とも、しっかりとした骨格と厚みのあるボディで強さもあるので、鴨のパテやローストビーフといったお肉の前菜とも相性がよかったです。後者は、ブルゴーニュの白ワインのように熟成の可能性があることを示したいと、特別に熟成させていたワイン。
赤は、まず、グルナッシュ主体にカリニャンとシラーをブレンドした「コマ・ヴェッラ(Coma Vella)2016」。木苺やブラッドオレンジの果実に、甘やかなスパイスと柔らかいタンニンのワインです。マグロの胡麻焼き・アンチョビソースと一緒に頂いたのですが、マグロとワインのテクスチャがマッチし、ワインにも少しのスパイシーさがあったので、アンチョビソースとも好相性でした。
次の赤ワイン「クロ・フォンタ(Clos Fonta)2017」は、スミレのお花やチェリーの華やかな香りに、樽由来の上品なヴァニラのニュアンス。ヴェルベットのような滑らかな口当たりで、やわらかい鹿肉のローストと合わせると、両者がとろけ合うような相性でした。お料理にコーヒーのクランブルも使われていて、ワインの余韻にあるコーヒー豆やビターチョコレートのアクセントをうまく捉えていました。
このように、白2種、赤2種をお料理のコースと合わせたのですが、マス・ダン・ジルのワインはお料理と一緒に味わうと、ワインと料理の各要素が引き立ち、食事を豊かにしてくれると感じました。「プリオラート」のワイン、自分の引き出しに入れておくと、より幅広いワインライフが楽しめるのではないでしょうか。
画像左から「コマ・ブランカ(Coma Blanca)2017」、「コマ・アルタ(Coma Alta) 2010」、「コマ・ヴェッラ(Coma Vella)2016」、「クロ・フォンタ(Clos Fonta)2017」
問い合わせ先:ピーロート・ジャパン※(購入も可能:外部サイト)
https://www.pieroth.jp/