文・写真/島 悠里
My wine journey by Yuri Shima ~世界のワイン便り Vol.12
シャンパーニュの中でも特級格付けのアイは、ピノ・ノワールの銘醸地として名高い村です。そこに拠点を置くシャンパーニュ・メゾンのボランジェは、このブドウ品種に並々ならぬ情熱を向けています。ボランジェファミリーの6代目であり、グローバルセールスディレクターのシリル・ドゥラリュ(Cyril Delarue)さんが来日したときに、お話を伺いました。
シリル・ドゥラリュさん。ワイン醸造とインターナショナルビジネスに
フォーカスしたアグリビジネスの修士号を持ち、
ワイナリーでのワインメーカーとしての経験もある。
なぜ、ピノ・ノワールを重視するかについて、シリルさんはこのブドウ品種の、「素晴らしい複雑性、比類なきテクスチャと繊細さ、そして長期にわたる熟成可能性」の3要素を挙げます。ボランジェのシャンパーニュは、どのキュヴェにも少なくとも60%のピノ・ノワールがブレンドされていますが、中でも、100%ピノ・ノワールで造られる「PNシリーズ」は、まさにボランジェのDNAが根付いたものだと言います。 このPNシリーズの誕生秘話も面白いもの。前醸造責任者であるジル・デコートさんが、醸造チーム内でピノ・ノワールを軸にしたブレンドのコンテストを開催しました。その時、ブラインドでのテイスティングで選ばれたものが、商品としてリリースされることになったのです。
このシリルさんによるセミナー(@ザ・ペニンシュラ東京)では、PNシリーズの他にも、アイ村の単一区画のピノ・ノワール100%から造られる、「ラ・コート・オー・ザンファン(La Cote Aux Enfants) 2013」も提供されました。
まず、初リリースとなる2015年は、ヴェルズネイ村を中心としたブレンドが選ばれ、キュヴェ名は「PN VZ 15」。コードネームのような名称ですが、これは、PN=ピノ・ノワール、VZ=ヴェルズネイ(Verzeney)村、15=2015年が主要な年(+リザーヴワイン)であることを意味します。翌年はまたもVZ村、そして2017年はTX(Tauxieres村)、そして遂に4作目となる2018年にボランジェの中核であるAYC(アイ村)が選ばれました。
「PN AYC 18」は、ふっくらした果実に重厚なボディでスケールの大きいワイン。実は、以前、このキュヴェのリリース前に、メゾンでまだラベルのない状態で出てきたものを、ブラインドで試飲する機会がありました。試飲後、「何だと思う?」という問いに、一緒にいた専門家の方と、アイなのではないかと結論付けました。それほど、この村とヴィンテージの特徴を存分に表していたのです。
そして最新作の2019年ベースが、「PN VZ 19」。再びVZ村がコンテストの勝者に返り咲きました。ボランジェはこの村に約18ヘクタールの畑を所有しています。北向きの畑で育つピノ・ノワールは、骨格やエレガンス、テンションを持ち合わせ、近年の気候変動でますます求められるようになっているブドウです。 「PN VZ 19」は、ヴェルズネイを中心に、他にもアイ、アヴネイ、ルーヴォワ、ミュティニー等のブドウから造られ、ヴィンテージは2019年を中心に2018年と2009年のリザーヴワイン(約50%)がブレンドされています。この最新作は、シリルさんとしてもこれまでの5作品のなかでも、一番のお気に入りなのだとか。ぜひお試しください!
セミナーでTeam Bollingerの皆さんと