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第5回本格焼酎&泡盛カクテルコンペティション開催 「本格」って何だ?

その前に「本格焼酎」について知りたいこと

さまざまイベントが復活しているニュースを聞くたびにアフターCOVID-19を実感している人が多いのでは無いだろうか。先日も日本酒造組合中央会が開催した「第5回本格焼酎&泡盛カクテルコンペティション」は3年ぶりの有観客での開催となり、全国12支部の予選を勝ち抜いた9名が東京のリーガルロイヤル東京にてその腕と味を競った。勝者については後述するとして、焼酎というお酒はみなさん飲んだことは無い人もいるだろうがお酒の種類の一つであることはご存知だろう。だが、このコンペのタイトルにある「本格焼酎」とは何か?「本格ではない焼酎はあるのか、無いのか」。もちろん、そんなことは基礎中の基礎で「知ってるわい!」という方も多いと思うが、ここは本題に入る前にすこしだけ焼酎というお酒について調べてみようと思う。

まずお酒は醸造酒と蒸留酒に大別される。アルコールを発酵させた液体(モロミと言われる)をそのまま搾ったり、濾過してつくられるのが醸造酒(清酒、ワイン、ビールなど)。蒸留機を使って蒸留釜の中にモロミを入れて熱を加えて沸騰させると、当然湯気が立ち上る。この湯気を冷却して得られるのが蒸留酒(ウイスキー、ウオッカやジン、ラム、そして焼酎)とまずは大別される。焼酎は「単式蒸留(単式蒸留焼酎、焼酎乙種)」と「連続式蒸留(連続式蒸留焼酎、焼酎甲類)」に分けらる。甲類はピュアなエチルアルコールを水で36度以下に薄めたもので、乙類とは全く別のお酒であり、また甲乙という名称は乙が甲より劣っている印象を持つイメージがありますがこれも便宜的なもので優劣は関係ない。芋焼酎、麦焼酎、米焼酎は「単式蒸留」で作られ、これが「本格焼酎」と呼ばれる焼酎なのである。ちなみに、泡盛も単式蒸留で造られている。もう少しだけ定義を説明すると、アルコール度は45度以下、原材料は酒税法上乙類には使えない原料が定義されているが、これに該当しなければ、なんでも原料として使える。例えば果実を使うとブランデーに、糖質原料(ナツメヤシと黒糖は例外)を使うとラムに該当するので、焼酎とは認められない。これはもともと「焼酎」が日本の蒸留酒を意味するものだったので明治以降ウイスキー、リキュール、スピリッツなどが外国から入ってきたため、これらの原材料に該当しないものが焼酎原料となった経緯があるのだ。昭和の焼酎ブームのときに、地方の特産農産物を使った珍しい焼酎が続々と誕生したのはこの規定があったからできたというわけ。もう一つ本格焼酎の特筆すべき点は水以外の添加物が全くないものだけが「本格焼酎」と呼べるようになった点。酒税法上、蒸留酒には砂糖や着色料の添加が認められているが、焼酎では認められていない。言い換えると「本格焼酎」であれば添加物のないことが保証されていると理解していいのだ。

蒸留酒は一般的に食中酒としては好まれないものが多く(いわゆる食前酒か食後酒)、最近ではハイボールと唐揚げがあるじゃないかと異論も出そうだけど、あれは単に唐揚げの油を炭酸で流しているだけで、食中酒なのかというと、大いに疑問が残る。そんななかで、焼酎は清酒と同じく日本では食中酒として飲まれているという点は興味深い。ただ、麹を使うアジアの蒸留酒はそのアルコール度数にかかわらず、すべて食中酒として飲まれていて、これが西洋の蒸留酒との大きな違いとも言われている。中国の白酒(パイチュー)は40~60度という高濃度だけれど中国ではストレートで料理に合わせて飲んでいるし、タイやインドネシア等も同じ傾向にある。本格焼酎(泡盛も)は蒸留酒のなかでは特異な存在であることはイメージしてもらえただろうか?その食中酒として焼酎は「新しいお酒」として世界のバーテンダーが来日し、焼酎蔵を訪れ、焼酎が世界的に注目され始めたのが2019年ころ。そして、本格焼酎は独自の豊かで美しいフレーバーがあるのでカクテルにも使われ、レストランのペアリングにも出てくる時代になってきたというわけです。 焼酎ほど時代でイメージが変化してきたお酒はありない。昭和後期までは九州の地酒程度の認識であり、労働者のお酒、臭いお酒というイメージ。それが今では若い男女にも親しまれ、清酒・洋酒いならぶ新しいお酒と認知は180度といっていいほど変わっている。日本政府は2012年「國酒を楽しもう」プロジェクトで「日本酒・焼酎は日本の【國酒】であり、日本の気候風土、日本人の忍耐強さ・丁寧さ、繊細さを象徴した、“日本らしさの結晶”として、その「魅力の認知向上と輸出促進とに取り組む」と表明もしている。

蒸留酒は一般的に食中酒としては好まれないものが多く(いわゆる食前酒か食後酒)、そんななかで、焼酎は清酒と同じく日本では食中酒として飲まれているという点は興味深い。ただ、麹を使うアジアの蒸留酒はそのアルコール度数にかかわらず、すべて食中酒として飲まれていて、これが西洋の蒸留酒との大きな違いとも言われている。中国の白酒(パイチュー)は40~60度という高濃度だけれど中国ではストレートで料理に合わせて飲んでいるし、タイやインドネシア等も同じ傾向にある。本格焼酎(泡盛も)は蒸留酒のなかでは特異な存在であることはイメージしてもらえただろうか?その食中酒として焼酎は「新しいお酒」として世界のバーテンダーが来日し、焼酎蔵を訪れ、焼酎が世界的に注目され始めたのが2019年ころ。そして、本格焼酎は独自の豊かで美しいフレーバーがあるのでカクテルにも使われ、レストランのペアリングにも出てくる時代になってきたというわけです。 焼酎ほど時代でイメージが変化してきたお酒はありない。昭和後期までは九州の地酒程度の認識であり、労働者のお酒、臭いお酒というイメージ。それが今では若い男女にも親しまれ、清酒・洋酒いならぶ新しいお酒と認知は180度といっていいほど変わっている。日本政府は2012年「國酒を楽しもう」プロジェクトで「日本酒・焼酎は日本の【國酒】であり、日本の気候風土、日本人の忍耐強さ・丁寧さ、繊細さを象徴した、“日本らしさの結晶”として、その「魅力の認知向上と輸出促進とに取り組む」と表明もしている。

焼酎カクテルのキーワードは「フレーバー」にあり

そして「本格焼酎・泡盛」を外国の方にもカクテルとしての認知をさらに広げたいという機運の高まりとともに、お酒業界もオリジナルのカクテルを開発し、味はもちろん、見た目の美しさ、サービスなどを競うことで、世界的なお酒として盛り上げて行くイベントが「カクテルコンペティション」というわけです。コンペティションは筆記試験が行われた。実技試験では、作品の「コンセプト、ネーミング、ビジュアル、味、プレゼンテーション」に加え、技術的な「礼儀作法、調合動作、適量」を基準に原料の風味や味わいが豊かな「本格焼酎」や「泡盛」をベースに、選手が創意工夫して考案したバーテンダー9名のオリジナルカクテル9作品が審査された。

カクテルは基本的にアルコール度数37度以上のお酒でカクテルメイキングされるけれど、焼酎・泡盛の平均は20~30度。もちろんアルコール度数が低い焼酎がカクテルに不向きというわけではなく、本格焼酎・泡盛には独自の豊かで美しいフレーバーを活かすことでカクテルの仕上がりが大きく魅力的なものになるといわれている。そしてその香りにはメインになるフレーバーとサブのフレーバーもあり、その際立たせかたも大きなポイント。そう、焼酎は「フレーバーのお酒」なのだ。バーテンダーの皆さんはこの大会前に多種の焼酎を官能の研究をして、このコンペティションへの準備とオリジナルカクテルを試作してきたのだと想像できる。また、今回のコンペティション会場は、たくさんのギャラリーがつめかけ、9名のバーテンダーは観客にオリジナルカクテルをその場でメーキングして振る舞い、観客もコミュニケーションを楽しめるという楽しいひとときも過ごせたのではないだろうか。

福田麻人さん(ark BAR GRANDE・名古屋)

日本一はark BAR GRANDE・名古屋の福田麻人さん

そして、コンペティションの結果は優勝は黒糖焼酎を使ったカクテル「アシビウタ(あしびうた)」を考案した福田麻人さん(ark BAR GRANDE・名古屋)。準優勝は、芋焼酎を使ったカクテル「萌芽(ほうが)」を考案した丸山和輝さん(オーセントホテル小樽)第3位は、酒粕焼酎を使ったカクテル「翠雨(すいう)」を考案した吉澤翔太さん(ホテルニューオータニ東京)。となった。

左から準優勝・丸山和輝さん、優勝・福田麻人さん、第三位・吉澤翔太さんさん

福田麻人さん考案のカクテル「アシビウタ」

奄美大島産100%の黒糖を使用し、貯蔵熟成することでよりまろやかに、そして豊かな香りが立ち上がる本格黒糖焼酎「浜千鳥乃詩 ゴールド」をベースに、トロピカルでフルーティなテイストを与える「パッションフルーツピューレ」、バナナの甘みが黒糖の味わいをさらに引き立てる「ジファール・バナーヌ・デュ・ブラジル」、爽やかな香りを加え鮮やかな色合いを表す「ボルス ブルーキュラソー」、カクテルに深みを出す「ジャパニーズ クラフトリキュール 奏<抹茶>」、「モナン アーモンド・シロップ」を加えた、奄美の美しいエメラルドグリーンの海をイメージしたカクテル。

丸山和輝さん考案のカクテル「萌芽(ほうが)」

屋久島の大自然にて育まれ、春の森を連想させる優しい味わいの本格芋焼酎「水ノ森」をベースに、じっくり熟成されたウイスキーの香りと春を感じさせる梅の味わいの「山崎樽熟成梅酒」、「ジャパニーズ クラフトリキュール 奏<抹茶>」が水ノ森に寄り添い、自然の情景を映し出したカクテル。最後に、「ザ ジャパニーズビターズ 檜」で春の森に漂う樹木の香りを加えた。

萌芽とは草木が芽生え、春の訪れを感じさせる表現で、日本の茶摘み歌にも使われている美しい言葉。冬から春にかけて移り行く季節の中で、“希望という芽”が萌芽するよう、世界へ癒しを届けたいという思いから創作した一杯。

吉澤翔太さん考案のカクテル「翠雨(すいう)」

吟醸香の特徴であるみずみずしい青りんごの香りの吟醸酒粕焼酎「七田」をベースに、エルダーフラワーの香りの「サンジェルマン」、七田に酸味を加えカクテルの味わいを引き締める「ライムジュース」、そして、青リンゴの香りを引き立てるとともにカクテルの輪郭を形成する「グリーンアップルシロップ」を加えたオリジナルカクテル。翠雨とは古くから愛されてきた初夏の季語で、情緒的な雨の情景と共に、自然の躍動を感じさせ、青葉の輝きを感じさせる一杯に仕上げた。

簡単で美味しいカクテル?それは「前割」

最後に、家庭でも至極簡単にできる「カクテル」レシピを紹介しよう。本格焼酎の「前割」とよばれるもの。これは本格焼酎と水を1:1で混ぜ、冷蔵庫(常温でもOK)で24時間おいてから飲む。これもれっきとしたカクテルである。実に飲みやすく、優しい味にしあがる。お試しあれ。

参考文献

読本 本格焼酎/プレジデント社刊

焼酎の科学/ブルーバックス・講談社刊

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