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取材・文/山本ジョー
第一部の「知って得するアリゴテ七不思議」でアリゴテ種の面白さに目覚めた皆さん、さあ次のステップへ進みましょう。
ブルゴーニュのオリジナル品種を深掘り!知って得するアリゴテ七不思議 記事はこちら
今回アリゴテ指南役として登場するのは、一流レストランでソムリエを務める傍らテイスターやワインスクール講師としても活躍する太田賢一ソムリエ。
銘柄ごとに様々な表情を見せるブルゴーニュ・アリゴテの特色に沿って、太田ソムリエがピッタリ合う料理の傾向を分類していきます。
「造り手が違うだけですべて同じブルゴーニュ産のアリゴテ・ワインを使い分ける」と聞くとかな~り難易度高そうですが、じつは数銘柄を並べて飲み比べると、ワインビギナーさんでも違いに気づけるほどキャラの違いは明確。
気分や料理でブルゴーニュ・アリゴテを使い分けるテクニック、誰でも会得できますよ!
「アリゴテ」はブラインド試飲の花形ながら素朴キャラ
ワインに詳しい人たちが集まって持ち寄りワイン会をすると、ときにラベルを隠して試飲し合う「ブラインド試飲イベント」で盛り上がったりしますよね。
そこで話題の中心になりえるのがズバリ、ブルゴーニュ・アリゴテ。
とくに「最後にアリゴテ種のワインを飲んだのは何年前だっけ……」なんて遠い目をしているワイン通たちは、大いなる進化を遂げたアリゴテ・ワインにビックリすると同時に、「こんな心地よい酸を持ったワインだったの!」と魅力を再認識できるのです。
アリゴテ種と同じブルゴーニュ原産の白ワイン品種といえば、シャルドネ種が筆頭に上げられますが、そもそもシャルドネ種とアリゴテ種の大きな違いって何?
「シャルドネが有名アーティストによる豪華なステージ・コンサートだとすれば、アリゴテは路上ライブ。シャルドネに比べ、アリゴテのワインは香りにも素朴なタッチがあり親しみやすいのです。カモミールや黄色いリンゴ、かりんが香ると表現する人もいますね」
とやさしく解説してくれるのは、太田賢一ソムリエ。
また、アリゴテ種から造られる主要アペラシオンである「ブルゴーニュ・アリゴテ」は、味わいのベースにハツラツとした酸を湛えています。
ワインを飲みなれず酸に敏感な人は、苦手に思うかもしれませんが……
「ワインの経験値が上がるほど、人は上質な酸をワインに求めるもの。ブドウの生命力を感じる酸が心地よくなって、次第に酸のとりこになります。『あの酸が欲しい!』『アリゴテが欲しい!』と、むしろ中毒性が高まるという(笑)」(太田ソムリエ)
加えて、手頃な価格帯もブルゴーニュ・アリゴテの魅力のひとつです。
「入手しやすい値段のワインが多く揃っているから、まず自分の好みと合うかどうか、気軽にトライできるのもいいですね。いっぽう、ワイン上級者が気になるのはコシュ・デュリやラモネといった高級ワイン生産者が手掛けるブルゴーニュ・アリゴテ。こちらは価格もそれなりにランクアップしますが、超高級ワインと同じ醸造技術で造られたブルゴーニュ・アリゴテ、興味をそそられるでしょう」(太田ソムリエ)
さらに進み、腰を据えアリゴテを徹底的に追求したくなった方には、『アリゴトゥール』というキーワードをお伝えしておきますね。
「『アリゴトゥール』は、アリゴテ種の保存と生産に情熱を燃やす、ブルゴーニュの実力派生産者たちが集まるグループです。アリゴトゥールの趣旨に賛同している生産者のワインはさすが、総じて素晴らしいクオリティですよ」(太田ソムリエ)
ブルゴーニュ内でも、アリゴテを再評価するムーブメントが加速しているのですね。
いざ、ブルゴーニュ・アリゴテ3本勝負
1 ブルゴーニュ・アリゴテ 2021/ジョゼフ・ドルーアン
産地/コート・ド・ボーヌ 参考価格2,600円(税抜)
万人に愛されるワインは、
素材を活かしたシンプル料理と
初めてブルゴーニュ・アリゴテを飲むなら、選んでほしいのがコチラ。レモンゼストやライム果汁、ハニーサックル(すいかずら)の控えめなフラワリーさがあります。味わいは瑞々しくてジューシー。引っ掛かりなくスルスルと飲め、余韻に残るミネラル感も心地よい。ドルーアンという生産者は、エントリーレベルからグラン・クリュまですべてをとんでもない品質で仕上げてくる異才の人です。そんなドルーアンのアリゴテは、教科書通りのスタイルにまとめられ、万人受け間違いナシでもあります
ココがキモのペアリングのポイント
「素材感を活かし、調理は最低限に留めた料理がオススメ。塩や酢、オリーブオイル、ピーナッツオイルなどをさっとかけるだけでOKです。また、ワインの酸に合わせ、酸味をふんだんに感じる料理と合わせるのもいいですね」
料理例:豆腐料理、刺身、カルパッチョ、ワサビを添えた焼鳥ササミ、棒棒鶏、小エビのサラダ、シェーブル・チーズなど
2 ブルゴーニュ・アリゴテ2020/ピエール=ルイ・エ・ジャン=フランソワ・ベルサン
産地/グラン・オーセロワ 参考価格:3,200円(税抜)
ミネラルたっぷりな個性派アリゴテは、肉も魚も◎
「産地がブルゴーニュ北のシャブリ地区で、土壌由来の火打石のようなニュアンスがあるのはシャブリに似てますね。ものすごくミネラリーですし、青リンゴを中心として引き締まったフルーツが香ります。一方味わいのほうは、フルーツがとても柔らかく熟れた印象で、口の中でシトラスから青リンゴ系まで幅広く広がる。ひとくち飲むごとに様々な表情が現れます。2020年が温暖な気候だったことにもよるのでしょうが、よく熟した果実とフレッシュな酸を見事に共存させています。」
ココがキモのペアリングのポイント!
「シャブリを彷彿とさせるミネラルのエッジが効いているので、苦みのある野菜の天ぷら、たけのこ、ホワイトアスパラ、カリフラワー、はたまた白身の肉を。ワインが含む旨味や燻製香を活かすなら、塩焼きの魚もピッタリです」
料理例:カリフラワーのスパイス風味グリル、魚介の澄まし汁、ブリしゃぶ、ホワイトマッシュルームのレモン塩サラダなど。
3 ブルゴーニュ・アリゴテ2021/ドメーヌ・レシュノー
産地/コート・ド・ニュイ 参考価格:3,700円(税抜)
乳製品が欲しくなる、アリゴテの概念を超えた逸品
「黄色いりんごや洋梨のようなフルーツの香りが柔らかく広がりますし、グラスを回すとナッツの香りも嗅ぎ取れます。味わいの面では、マンゴーやパパイヤをイメージさせる、より成熟度の進んだトロピカルフルーツが前面に出てきます。と同時に、アリゴテ種が持つ潜在的な酸味も活き活きとしています。味わいの要素どれもが強く、高い次元のところでバランスがとれている。もはやアリゴテの一般的な概念を超えていそうですが、私の好みには一番合致していました」。
ココがキモのペアリングのポイント!
「口当たりがクリーミーで、有り余るくらい果実の旨味が感じられるワインなので、料理は牛乳、生クリーム、バター、チーズといった乳製品や卵を使うといい。パスタやグラタンなら、魚介を使うとよりペアリングの完成度が上がりそう」
料理例:鱈やホタテとパプリカのバターホイル焼き、クリーム系パスタ、ウニのグラタン、牡蠣のグラタン、出汁巻玉子など
パワフルなブルゴーニュ・アリゴテには、海老入りトマトクリームパスタを。
爽やかなブルゴーニュ・アリゴテでジメジメ気候を吹き飛ばせ
フレッシュな酸味を持つブルゴーニュ・アリゴテ、本当はもっと日本で飲まれるべきワインなのだとか。
「爽やかアリゴテでジメジメ気候を吹き飛ばせ、というわけで日本は湿気が多い国。5月頃から蒸してきて、夏には猛暑となり、10月くらいまで気温も湿気も高めのまま。その間は、いつでもブルゴーニュ・アリゴテで口中も気分もリフレッシュしたいところですね。寒さ厳しい冬には冬でまた、暖かくした部屋で鍋料理とブルゴーニュ・アリゴテを合わせる楽しみが待っています」(太田ソムリエ)
外飲みも気持ちいい、ピクニックのお供にブルゴーニュ・アリゴテはどうでしょう?
「気軽に飲めるワインという特性からも、ブルゴーニュ・アリゴテは当然ピクニックにうってつけです。まずはアペリティフとして喉を潤してから、持参したサンドイッチやチーズなどと合わせて屋外でノンビリ。ここでもペアリングにこだわりたいなら、①のジョゼフ・ドルーアンはフレッシュなニュアンスと合わせピクルスやきゅうりのサンドイッチ。②のピエール=ルイ・エ・ジャン=フランソワ・ベルサンは、燻製香を意識してハムサンドと。③のレシュノーは、推しの素材である卵を使った卵サンドで決まりです!」(太田ソムリエ)
サンドイッチも具材別にペアリングとは、太田ソムリエ、恐れ入りました!
太田賢一(Ota Kenichi)
北海道札幌市出身
2002年 レストラン「モリエール」(札幌)
2005年 オーストラリア・シドニー滞在。ワイナリー研修と並行し、多様なダイニングシーンでの研鑽を積む
2006年 マンダリンオリエンタル東京「シグネチャー」
2008年 レストラン「タテルヨシノ銀座」ソムリエ
2016年 レストラン「エスキス」シェフ・ソムリエ
2023年2月 独立起業 株式会社Somm-rize 代表取締役社長に就任
「業務委託型ソムリエ」、「酒飯/飲食店アドバイザー」、「Made in/by Japanの世界発信」などワインを軸として幅広く活動する。