文/山田 久美子 ※編集部(一部)
若い人たちは「お酒」よりも楽しいことが世の中には多いのか、健康志向からか酒離れが叫ばれて久しい。そして特にお酒のなかでもワインは、やたら敷居を高く迫ってきて、ただ楽しく飲みたいという気持ちがそがれてしまうことがある。
また、物価は上がっているのに収入は上がらない現状では、ことさらお酒にはお金をかけられないというのもあるだろう。そんな環境がさらにワインにはアゲインストに。
なぜなら、2,000円だして1本(750ml)のワインを買うと、楽しめる期は1日~3日程度。
ワインは空けたら飲みきらないといけないと言われてきていて、最近はスクリューキャップのワインもあるしコルクのワインでも1日で飲みきらなくても劣化しないワインは多いものの、それでも2~3日くらいで飲みきるのが良いのだろう。一方同じ値段のウイスキーならば、嗜む程度の人なら1ヶ月は楽しめるだろう。
スマホだ、ゲームだとお金を使いたいことが多い中で「ワイン」は贅沢品なのかもしれないし、お酒なら缶ビールや缶酎ハイでいいやとなるのも道理だ。
だから、ではないが、ワインに親しんでもらいたいと涙ぐましい努力の「ガイド本」が溢れている。
今回は12月4日に発売された、とてもユニークな“ビギナー向けのワイン入門”「キャラクターでわかる ワイン図鑑」を紹介したいと思う。
巷にある数多のビギナー向けワイン本を読むといつも疑問に思うことがある。書き手は一生懸命解説しているのだけれど、その最低限のラインは「ワインのビギナー」を想定しているはずなのに、読者想定のハードルがすでに高い場合が多い。また、読むだけでお腹いっぱいになってしまい、(あるいは飲んだ気分になってしまう)何故かワインを飲もうとは思えない、結局、敷居をあげる残念な仕上がり(あくまでも超初心者にね)の本もある。
例えば学校で習う数学をイメージしよう。
数学は基本的には「解」は一つだけれど、そこへの辿り着き方は幾通りもある。
でも、分からない人にとってはそれ以前に「何が分からないのかも分からない」のだ。
ハードルが高いというのは「まさか、そこからお話を」という視点に欠けていることがままあるということだ。
ワインを知ってもらいたい、好きになってもらうことを目的とするなら、自分の目線では無く分からない人の目線になって自己紹介(ワインのね)をしていかないと通じないのだ。
今回紹介する本の著者は「紫貴あき」さん。
本サイトでは「今夜ワインが飲みたくなる話し」を月1で連載していただいている、アカデミー・デュ・ヴァンというワインスクールの大人気講師も務めているプロフェッショナルだ。
彼女のもとには基本的にワインが好きという生徒さんが集まり、その人たちに紫貴さんはワインについてビシバシスパルタで教えているわけだが、長年の経験から初心者は何が分からないのかをつかんでいらっしゃる方なのだと思う。そこを今回は、キャラクターという編集手法を駆使してワインの世界へ誘っているのがなんともユニークというわけだ。
ではレビューに移ろう。ちなみに、今回のこの本についてのレビューは編集部ではなく、限りなく素人であり、ワインを感覚で愉しんでいる人に読んでもらい原稿をお願いした。
以下レビュー
もっと若い時にこの本があれば、もっと若い時からワインを深く楽しめたなあ!
と強く思うワイン図鑑に出合いました。
著者は、日本最大級ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の大人気講師でもある、J.S.A.認定シニアソムリエ 紫貴あきさん。
こちらの図鑑、ワインの世界を楽しむコツは「ブドウ品種の個性を覚えること」という前提のもと、擬人化したブドウ品種たちを紹介しているんです。
それぞれ擬人化されたキャラクターの表情、衣装や小物にも特徴が出ていて、視覚的にイメージできる非常に覚えやすい仕掛けとなっています。
特に印象に残ったのは、「シャルドネ」が「化粧映えする美人」で「リースリング」が「すっぴん美人」という表現。
すべてのブドウ品種キャラクターの特徴が的を得ていて面白く、一度読んだら忘れないと思います。
また各ブドウ品種の紹介ページには、味わい(酸とタンニンのバランス)、代表的な香り、冷涼地区(酸が高く軽やか)か温暖地区(完熟度が高く重い)かなどワインを選ぶ際のポイントが分かりやすく記載されていて、虎の巻としても手放せなくなりそう。
そしていまだに「どれが産地でどれが品種?」と分からなくなるワインのラベル。
「ワイン名」と「ブドウ品種名」が必ずしも一致しないという初歩的な解説から、フランスやイタリア、スペイン、ドイツなど主要国における代表的なラベルの読み方を分かりやすい図で説明してくれているので、ワインショップで見てみよう!選んでみたい!という気持ちになります。
若い時にワインのラベル読解でつまずいたことで「もうワインは選んでもらえばいいや!」と諦め、いまだに苦手意識の高い私にとって、とてもありがたいコンテンツです。
さらにワインショップでの選び方や店員さんへの伝え方、テイスティングの方法や飲んだワインの記録の残し方、自宅でのワインの楽しみ方、レストランでのワインの飲み方などさまざまな角度から解説があり、「読んでお勉強して満足」ではなく「次は実践だ!」と色々と試してみたくなりました。
今後、長い長いお付き合いとなりそうな図鑑です!
編集部コメント
超初心者を想定しているが、「品種の起源と歴史」のコラム部分などワインラバーが読んでも知らなかった事実や深く調べ上げた内容や構成になっている。キャラクターの設定や著者の持ち味でもある深く物事を探求する内容が「さらっ、と書かれている」その仕事はまさに神は細部に宿る所以なのです。
「キャラクターでわかる ワイン図鑑」
著者/紫貴あき 【イラスト】中井わこ
出版社/かんき出版
定価/1,800円(税抜)
全国主要書店、アマゾンなどEC書店で絶賛発売中。
紫貴あきさん
アカデミー・デュ・ヴァン講師。クラスの募集開始から瞬殺で満席に。ソムリエ試験やワインエキスパート試験の合格率の高さは有名。他に「ゼロからスタート!紫貴あきのソムリエ試験一冊目の教科書」がある。大の犬好き(※この本にもワンちゃんの比喩が多い)。