文/山田 靖
以前ファッション誌の編集者をしていたとき、6月のミラノコレクションやピッティ・ウオモの取材でイタリアに行ったら「プロセッコ」を飲んでその取材続きのハードな日程を楽しく乗り切ると同僚から聞き、ハードなことでも楽しそうだと内心羨ましかった。現地で飲む現地のスパークリングは、味わいも格別なものであろうことは容易に想像が付く。フランスにいけば、シャンパーニュならばシャンパン、ブルゴーニュやアルザスならクレマン……。
ということで、今回はイタリアのスパークリングで日本の暑い夏を乗り切る、オススメの1本を紹介しよう。
イタリアのスパークリングワインの総称は「スプマンテ」。その中にはシャンパンにひけをとらない超高級スパークリングワイン「フランチャコルタ」や「アルタランガ」、ヴェネト州でグレーラ品種から造られる「プロセッコ」、甘口タイプの「アスティ」、赤の弱発泡ワイン「ランブルスコ」と豊富に存在する。どのワインも魅力的だけれど、今回は「フリッツァンテ」を紹介しよう。
もしかすると、今の日本はノンドゼ(補糖を極力ゼロに近づける)のシャンパンが好まれ、ビールもキリッと最初の味わいが強いもの、ハイボールも強炭酸で割ったものなど「キレ」が求める人が多いように思う。しかし、この「フリッツァンテ」はある意味、逆をいく。「フリッツァンテ」の定義はガス圧。スプマンテは3気圧以上と規定されているが、フリッツァンテは1~2.5気圧と低い。炭酸ガスの圧が低いため、穏やかで優しい泡のワインと言われている。暑さやクーラーで疲れた身体をやすめるにはキレに富んだものより優しい味わいのスパークリングがしっくりくる。また、ゆっくりと飲み続けられるワイン、そうなるとこのフリッツァンテという選択は◎なのである。
今回紹介するワインは「バイロン・ビアンコ フリッツァンテ サレント IGP」。残念ながら日本での発売は未定だが、このワインを知ったことで、「フリッツァンテ」をもっと飲んでみたいと思い、あえて紹介したいと思った。
ワイナリーはイタリア・プーリア州南部サレント地方にある「Cantine Lizzano」。
Cantine Lizzano社の創業は1959年、この地のブドウ農家たちと農業協同組合を興し、近代的な醸造技術を導入して始めた。ファーストヴィンテージは1961年。現在では南イタリアで最大かつ最も近代的な組合の 1 つとなり、400 人を超えるワインメーカーの会員と 500 ヘクタールのワイン生産地を擁し自生種(プリミティーヴォ、ネグロアマーロ、マルヴァジア、モスカート)と国際種(シャルドネ、ピノ、カベルネ)のブドウ畑がある。
来日したCantine Lizzano社
ゼネラルマネージャーGiuseppe Gonnellaさん
今回、日本で行われた試飲会のためにゼネラルマネージャーのGiuseppe Gonnellaさんが来日され、そこではフリッツァンテ以外も試飲の機会にめぐまれた。
左から「バイロン・ビアンコ フリッツァンテ サレントIGP」「“マッキア”ビアンコリッツァーノ2023 DOP」「“マッキア”マルヴァジア・ネーラ リッツァーノ2020」「“マーノロッソ”ネグロアマーロ リッツァーノDOP(日本で入手可能)」「“マンドーロ”プリミティーヴォ・デォ・ディ・マンドゥーリア・ドルチェ・ナトゥラーレDOCG2020(日本で入手可能)」
“バイロン 175 ビアンコ”プーリア IGP フリッツァンテ カンティーナ・ルッジェーリ
このワインは、フレシュ感をだすためにシャルドネを主体にマルヴァジア・ビアンカも使われている。収穫も早摘みで、味わいは甘味と果実味があり、軽くてとても飲みやすい。フリッツァンテの優しい飲み口が味覚を刺激する、という魅力がよく分かるワインだ。甘めといっても爽やかな味わいで、ストイックなドライさがないところがフードフレンドリーさにも繋がっている。
品種/シャルドネ、マルヴァジア・ビアンカ