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パイパー・エドシック、シャルル・エドシック、そしてレア・シャンパーニュを所有するPH-CH社の社長、ダミアン・ラフォリ氏が語る“シャンパーニュの未来”

サスティナビリティを超えろ!シャンパーニュの未来

シャンパーニュの未来を明確なビジョンで照らす人物がいる。サスティナビリティから顧客満足度まで総合的にジャッジする「Bコープ」認証獲得への道を創り上げたダミアン・ラフォリ氏だ。彼はパイパー・エドシック、シャルル・エドシック、レア・シャンパーニュの3銘柄を扱うPH-CH社の社長である。
異常気象、多発する紛争、為替変動を乗り越えシャンパーニュ産業を支えてきた彼が、日本のワイン愛好家たちへ贈りたいメッセージとは?

7月24日に開催された日本リカー創立60周年記念グランドテイスティングにて、
消費者へシャンパーニュを紹介するダミアン・ラフォリ氏。
定員150名分の参加チケットは事前に完売、当日は大いに盛り上がった。

「シャンパーニュを、モノとして売りたくないんです」

この言葉は「日本のインポーター(日本リカー)と資本提携する理由」を伺ったときに、パイパー・エドシック、シャルル・エドシック、そしてレア・シャンパーニュを所有するPH-CH社の社長、ダミアン・ラフォリ氏が発したポリシーだ。その意図について明快な見解も述べてくれた。

「モノとして売る」なら、シャンパーニュを出荷するまでが仕事のうち。
だが、出荷した後、どのような情報とともに消費者の手へ渡っているのか最後まで見届けたい。
つまり「モノとして売りたくない」は、「日本市場でのシャンパーニュの在り方に責任を持ちたい」ということ。
PH-CH社が日本企業との資本提携を望んだのも、そこに理由がある。



「日本のワイン輸入会社と資本面でも手を組んだのは、シャンパーニュの情報を正確に消費者へ伝えるため。高品質のワインを扱い続け、このたび創立60周年を迎えた日本リカーに、2016年4月から資本提携をしています。ルイ・ジャド社も日本リカーへ資本提携していて、きっとフランスは日本とタッグを組むという考え方が好きなんでしょうね」(ラフォリ氏)

皆が抱くシャンパーニュのイメージは、ファッショナブルでゴージャス。
それはそれで先人によるブランディングが成功した証だけれど、銘柄ごとの特長はどこまで把握されているだろうか。
シャンパーニュを買い求める際、「シャンパーニュならなんでもいい。とにかく値段次第」でなく、「このシャンパーニュじゃなきゃ」と指名するには、消費者にそれなりの知識が必要だ。
とくにパイパー・エドシック、シャルル・エドシックは同族の創立者ゆえ名前が似通っていて混乱しがちなわけだが、シャンパーニュ好きなら誰しも「前者はモダン、後者はクラシック」くらいのキャラ分けは容易だろう。
数多くのシャンパーニュが流通する日本で、2つの『エドシック』の違いを語れる人が決して少なくない、PH-CH社が日本リカーとの提携によって静かなるメッセージを発してきたおかげだ。

ダミアン・ラフォリ氏は、富裕層のカスタマーを対象とした
大手ラグジュアリー・ブランドでコンサルティングを手掛けたのち、
2003年にレミー・コワントロー社へ。2015年からPH-CH社の社長に就任。

畑で汗を流す社長が目指した「Bコープ」認証

割り切って商品をモノ扱いする従来のコンサルタントと一線を画すラフォリ氏は、ときにオフィスのデスクから離れ、シャンパーニュの畑に立つ。

「うちの会社は醸造家や栽培家だけでなく、社長も事務方の社員も全員、畑に立って汗を流すのです。畑に実るブドウを自らの手で摘み取り、いいものを選んで顧客のもとへ送り出す、すべての流れを一貫して体感できるのが醍醐味。だから社長として、そのプロセスと努力の結果を消費者へシェアしようと力を尽くすこともできるのです」(ラフォリ氏)

10年、20年前に造ったリザーヴワインをブレンドするシャンパーニュが今のビジネスの成功につながり、今の段階で社長が下した決断は今後10年、20年後の社運を左右する。
時間軸を軽々超えていくシャンパーニュだけに、経営面を担う社長には高度な予測能力が求められる。

そんな彼が近年着目したのは、「Bコープ」認証だ。
Bコープはアメリカの非営利団体による国際認証で、ブドウ畑や労働環境にフォーカスを当てたサスティナビリティにとどまらない。
再生可能エネルギーの占める率はどれほどか、従業員の最低賃金は最高賃金の何倍の差があるのか、理念が社会をよりよい方向へ導いているか、仕事の関係者も株主も満足しているか、などなどひとつの企業を約200のチェック項目から審査し、高い公益性を持つとされた優良企業だけが認証を取得できる。

2022年、PH-CH社は企業姿勢をより多くのワインラバーへ伝えるべく、シャンパーニュ初となるBコープ認証を見事取得した。 「うちの畑がすべて自社畑だったら、もっと簡単に達成できたでしょう。でもご存じの通り、一定規模のシャンパーニュ企業は多くの栽培農家が関わっています。その皆さん一人ひとりからの協力なしに、Bコープ認証は得られませんでした。サスティナビリティも有機農法も本来、シャンパーニュ地方の全員で取り組まなければならない課題。我が社のBコープ取得は、シャンパーニュ全体を革新させるページのひとつとなるはずです」(ラフォリ氏)

なんでもない日にシャンパーニュは開けていい

ラフォリ氏率いるPH-CH社は、会社のかたちを未来へ向け柔軟に変容させつつ、取り扱うシャンパーニュ3銘柄については長い歴史で確立した格式そのままに提供している。
さて、この3銘柄はどう飲み分ければいいのだろう?

「新しい発見を求めている若い人たちに勧めたいのは、パイパー・エドシック。フレッシュでバランスの良さが魅力で、食事前の乾杯に最適ですね。ワイン経験値の高い方なら、シャルル・エドシックを。長期熟成させたリザーヴワインをたっぷりブレンドして深い複雑味を持たせながら、同時にフレッシュ感もキープしているのがユニークです。さらに特別な味覚体験を得たい向きには、最良の収穫年にのみ造られるレア・シャンパーニュをどうぞ。ワインに詳しい人も詳しくない人も、口に含めば『これは普通のシャンパーニュと違う!』と唸ることでしょう」(ラフォリ氏)

レア・シャンパーニュだけでなく、どのシャンパーニュも基本的には特別な飲み物として珍重されるけれど、ラフォリ氏によれば
「誕生日や記念日だけでなく、いつ飲んでもいいんです。美しい人生そのものを祝うのがシャンパーニュなのだから、なんでもない日にポンと開けちゃうのも正解」。

プライベートも含め来日経験豊富なラフォリ氏、次に日本へやってきた際には、また新しいニュースや自由な提案で日本のシャンパーニュ・シーンを沸かせてほしい。


パイパー・エドシック
エッセンシエル エクストラ・ブリュット
品種/ピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネ
希望小売価格/8,500円(税別)
マリリン・モンローに愛されたとの逸話が伝わるパイパー・エドシック。エッセンシエル エクストラ・ブリュットは柑橘やりんごが香り力強い味わい。

シャルル・エドシック
ブリュット レゼルヴ
品種/ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエ
希望小売価格/10,300円(税別)
広大な地下の採石場跡地にてワインを長期熟成させるシャルル・エドシック。平均10年熟成のリザーヴワインを50%も使用しているブリュット・レゼルヴは、トーストやマンゴーが香る。

レア・シャンパーニュ
レア 2013
品種/シャルドネ、ピノ・ノワール
希望小売価格/40,000円(税別)
初ヴィンテージの1976年以来、約50年でリリースされたのはシェフ・ド・カーヴがこれぞと見極めた14ヴィンテージのみ。2013年物を含めすべてが繊細ながら余韻は長く、長期熟成も可能だ。

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