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WINE

チリ・ピノの中でも「コノスルのピノ・ノワール」が美味しいわけ

年末年始に飲みたい1本:「コノスル 20バレル リミテッド・エディション」 ピノ・ノワール
文/山田 靖

「コノスル」というワイン、酒販店はもとよりスーパーやコンビニエンスストアなど販路も幅広く、飲みたいときに購入できるワインのトップブランドの一つとも言えるチリワインだ。みなさんも、エチケットに自転車やガチョウが描かれているワインといえば「あぁ、あのワイン!?」と思う方も多いだろう。まだコノスルを知らないという読者の方は、特に品種も13種と多岐に亘る「ビシクレタ・レゼルバ」シリーズは、コノスルにおける品種特性を知るうえでも入門編的なワインなので試してみて欲しい。この「ビシクレタ・レゼルバ」シリーズ、価格が手頃でありながらも、この値段でこの品質のワイン!と驚くはずだ。私も個人的に、このシリーズの「リースリング」「ゲベルツトレミナール」は飲み飽きなく好きでよく飲んでいる。蛇足だがWhy not?マガジンではこのレンジのコノスルの愉しみ方提案を過去特集もしている。

そして先日、コノスルの醸造責任者であるマティアス・リオス氏が来日。「チリのピノ・ノワールを解き明かす」をテーマとしたセミナーが開催され、彼の解説から興味深いお話が聞けた。今回はコノスルの品種ヴァラエティではなく、世界的な人気品種「ピノ・ノワール」に絞ってお話しようと思う。コノスルのピノ・ノワールの魅力を紐解きながら、飲むべきコノスルを紹介したい。

チリ・コノスル社の醸造責任者マティアス・リオスさん
2003年にワインメーカーとしてコノスルに加入。「オシオ」を造り、世界最大のピノ・ノワール生産者になったコノスルにおいて、その成長の中心的役割を担う。2018年4月に醸造責任者に就任。

コノスルが創業した1993年当時は「チリワイン=安価なワイン」であり、質は二の次といった固定観念が残念ながら世間の常識(特に日本では)であった。そんな時代に「チリでプレミアムワインを」「最新技術を導入」「有機栽培」という標を掲げたのがコノスルだった。また、マティアス・リオス氏がコノスルに入社した2003年頃はコノスルが最高品質のピノ・ノワールを造るプロジェクトをスタートさせていたときでもあった。
「悪魔がピノ・ノワールを造った」といわれるピノ・ノワール。対になるのは「神がカベルネ・ソーヴィニヨンを造り」だ。ピノ・ノワールは樹木が病気や天候に作用されやすく、栽培が難しく過酷な条件をクリアしていかなければならない。ちなみにカベルネは割と栽培しやすい環境でも育つ。

チリはもともと、その自然条件からぶどう栽培の楽園とも呼ばれている。北にアタカマ砂漠、南にパタゴニア氷原、東にアンデス山脈が連なり、西は太平洋と細長い国土のチリ。そこの南緯30度~40度、北はアコンカグア・ヴァレーから南はビオビオ・ヴァレーまで7カ所1,344haの自社畑をコノスルは所有しており、品種ごとに適した地を随所に構えている。


ピノ・ノワールが育つ条件は「涼しくおだやかな気候」「湿度の低さ」「十分な日光が当たる」と言われている。ではコノスルのピノ・ノワールが育つ土壌と気候はどうなのか?
コノスルの最初のピノ・ノワールはコノスル設立の地チンバロンゴに1968年に植樹され、1994年にコノスル初のピノ・ノワールが輸出される。さらなる品質のピノ・ノワールを目指してピノ・ノワールプロジェクトが1999年スタートし、テロワール探求の結果「サンアントニオ・ヴァレー」と「カサブランカ」という土地が選ばれる。土壌は粘土状の赤土と花崗岩で、ぶどうの樹に不可欠な栄養素とミネラルを含んでおり、粘土は冷却効果もあることからピノ・ノワールに適したテロワールだ。
気候は地中海性気候で、沿岸部は夏の最高気温が22℃と涼しく、春と夏は雨が少なく降雨は冬に集中する。いわゆるクールクライメートであるがゆえに、夏の気温が比較的低くて涼しく、昼夜の温度差が大きいことでぶどうがゆっくりと成熟し、酸度が高く保たれ、それでいて糖度の上昇が抑えられるという、ピノ・ノワールを造るのに最適な環境が保たれているのだ。しかし、この環境というのは特筆すべき環境では無く、世界のピノ・ノワール銘醸地では多くがこのような環境下でぶどうが育っている。ではコノスルを環境面で銘醸地とならしめている特別な環境は何か。それは「フンボルト海流」の存在だ。
チリの海側(太平洋)は寒流、南部のパタゴニアは氷の土地。そこを通るフンボルト海流は冷気をチリの大地へ運ぶ。沿岸部の小高い沿岸山脈からは冷涼な空気が流れ、アンデス山脈内陸に吹く風も冷涼な風を運ぶ。これでエレガントなワインが育つ環境が備わっているのである。ぶどうの収穫は手摘みし、除梗後、発酵前のコールドマセレーション、破砕は適切な強度での人力による足踏み。その後発酵、フレンチオーク樽での熟成へと流れていく。オーガニックなぶどうを繊細なマネージメント(管理)の元、ワインは造られていく。そして、今や世界最大のピノ・ノワール生産者とも表現される存在になっている。

ピノ・ノワールから少し話しは離れて、コノスル全体をみてみよう。
No family trees,=ファミリーストーリーを語るような伝統はなく
No dusty bottles,=埃をかぶったヴィンテージボトルもない
Just quality wine=ただ、あるのは品質のいいワイン
温故知新というよりも、進取の姿勢と反骨精神がワイン造りの根底にある。どこよりも早くオーガニックワインに着手し、自然の力を最大限に使い研究とテクノロジーで進化させてきたのがコノスルのワインがOne &Onlyだと言えるのだ。 
コノスルは設立当初から、「土地を守り、次世代も守る」という意志のもと雑草や害虫対策として羊やアヒルを畑に放つなど、サスティナブルな農法、有機農法に力を入れたワイン造りを行ってきた。

その根底には、周辺の大自然や労働者の環境への深い理解、もちろん消費者に優しく良いワインを造るという企業姿勢がある。エチケットに自転車が描かれていると前述したが、そのあしらわれている自転車の持つ意味は大きい。実際にスタッフが広大な畑を行き来するためのエコな移動手段であり、環境への配慮からガソリン車の代わりに自転車を推奨してきた。コノスルの理念がその自転車に込められているのだ。今でこそ「自然派が多い」とも知られるチリだが、コノスルが創業した1993年、その概念すらあまり知られていなかった時代に、今では誰もが唱えるサスティナブルを掲げていたわけである。
コノスルは、畑で使われる堆肥は自社の土地のぶどうの果皮、梗を使い、その土地独自の微生物が働くことで、土壌の独自性を大切にしている。そしてさまざまな種類の植物や昆虫が生きる自然環境を造ることで、人為的ではない自然のバランスも優先させてもいる。そうした取り組みから2024年2月には「グリーン・ソサエティ」という新シリーズのワインもローンチしている。

「グリーン・ソサエティ」シリーズ

ぶどうが育つ畑にはぶどうだけが存在するのでは無く、「植物」「野生世物」「鳥類」「昆虫」がそれぞれよい影響を与え合いながら共生している。このシリーズは生物多様性を尊重したワイン造りの哲学をもち、コノスルのサスティナブルへの一つの到達点と言える。ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール、シャルドネ、ソービニョン・ブランがある。 参考価格/1,550円(税抜)

コノスルが目指す、ONE&ONLYなピノ・ノワールとは?

マティアスさんはコノスルのピノ・ノワールの特徴を「豊富な日照量とクールクライメート、畑でぶどうが十分に熟すのがチリピノ・ノワールの最大の特徴だ。甘味のある穏やかなタンニン、口に含んだときの涼やかでしっかりとした酸味、ワインの色合いの凝縮感、フレシュさが感じられるのが、ほかのどこにもないチリのピノ・ノワールだ」と強調した。 ではコノスルのピノ・ノワールその独自性を味わえるぜひ飲んでほしいワインを紹介しよう。コノスルのファインワインのラインナップは「シングルヴィンヤード」シリーズ、「20バレル」シリーズ、「OCIO(オシオ)」「シレンシオ(カベルネ・ソーヴィニヨン品種)」とある。

オシオセラー

ピノ・ノワールの最高峰「オシオ」だ。このワインは、ブルゴーニュの銘醸「ドエーヌ・ジャク・プリウール」のマルタン・プリウール協力のもと造られた。初ヴィンテージは2003年。ブルゴーニュのピノ・ノワールを目指したのではなく、カサブランカ・ヴァレー、エル・トリアングロ地区のぶどうを使い、最新テクノロジーを備えた「オシオセラー」と呼ばれるピノ・ノワール専用の特別なセラーで」醸成され、チリの個性を明確に表現された最高峰のアイコンピノ・ノワール「オシオ」が完成する。


「コノスル オシオ ピノノワール」
産地/D.O.カサブランカ・ヴァレー(エル・トリアングロ)
品種/ピノ・ノワール100%
参考価格/10,000円(税抜)

コノスル オシオ 価格も10,000円となかなかである(ただ、ブルゴーニュの同レベルのワイン比較しても、この値段設定はリーズナブル感であることは確かである)。

そして、もう1種類。コノスル入門ワイン(「ビシクレタ・レゼルバ」シリーズ)から、もう一歩進むのならば、絶対的にオススメするのが「コノスル 20バレル リミテッド・エディション」だ。これは「20樽のみの限定生産」というコンセプトのもとサンアントニオ・ヴァレー最良の区画から収穫量をおさえて造られている。このシリーズはピノ・ノワール以外、シャルドネ、ソービニョン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨンもある。筆者はOCIOも20バレルも飲んだことがあるが、20バレルは価格面からみても、味わいも素晴らしいワインだと思う。

「コノスル 20バレル リミテッド・エディション」 ピノ・ノワール
産地/D.O.サンアントニオ・ヴァレー
品種/ピノ・ノワール100%
参考価格/3,500円(税抜)

ちなみに、このコノスルの日本販売元は「スマイル」という輸入代理店。コノスルのオーガニックへの道へ舵をきったのは、スマイルからの提言もあったという。また、スマイルの他のワインラインナップにおいても、オーガニックワインが豊富にある。もし、酒販店等でコノスルが見つからなかったとき、バックラベルに「輸入販売:スマイル」と書かれているワインがあったら、だまされたと思って選んでみてほしい。いいワインが多い。筆者の中で、ワインを輸入会社というカテゴリーで選ぶなら信頼をおいている会社の一つである。

コノスル・オシオ・ピノ・ノワール 30周年記念ボトル
2003年ファーストヴィンテージから30年目の記念ワイン。たゆまぬ研究と進化させてきたオシオはなんと2013年以降、ワインの評価は95~94点を獲得し続けている。この30周年ボトルはなんと2018年から2022年までの5ヴィンテージをブレンドしたワイン(マティアスさんはさかんに「こんなクレジーなワインはない」と発言していました)。全世界で生産本数2000本、日本には200本輸入されている。すでに品切れとなっている酒販店も多いが、まだ完全終売にはなっていないのでECサイト等で探してみてほしい。


2018年~最新2022年のマルチヴィンテージ
参考価格/15,000円(税抜き)

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山田_yamada 靖_yasushi

Why not?マガジン編集長。長くオールドメディアで編集を担当して得たものをデジタルメディアで形造りたい。座右の銘は「立って半畳、寝て一畳」。猫馬鹿。年一でインドネシア・バリのバカンスはもはやルーティン。

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