文/山田 靖 写真/小松勇二
去る4月9日、ブラッスリー・レカン(上野)にて、南アフリカ最大手ワインブランド「KWV」のチーフワインメーカー・ジャスティン・コランスさんを迎えてワイン会が開催された。
参加者は「KWV」は全く知識も無く初めて、ワイン名は知っていたが飲むのは初めてという方から、南アフリカへの渡航歴もありKWV大好きワインラバーまで多様な皆さんが集い、ジャスティンさんお話や、レカングループ総支配人エグゼクティブソムリエの近藤佑哉さんのワインコメントに興味津々に聞きいりワインとペアリング料理を楽む一時を過ごした。今回はそのワイン会での南アフリカという産地やKWVの魅力について語ってくれたことをレポートしたい。
KWVワインを協賛提供してくれた輸入元国分グループ本社マーケティング部副部長佐藤公彦さんはKWVを「国分グループ本社はKWVとは1964年からの長い付き合い。1964年といえば第1回目東京オリンピックの年。今年で取引60周年という記念の年を迎えます。KWVはデイリーワインからアッパーレンジまでのラインナップがありますが、どのワインにも共通している点はコストパフォーマンスに優れ、それでいて品質の優秀さです。今回のワイン会で皆さんにぜひ実感して知っていただきたい」と語ってくれた。また、同じく国分グループ本社KWVブランド担当の野島麻央さんは「KWVは100年以上の歴史ある会社で、南アフリカのリーディングカンパニー、ワインだけでなくブランデー、ジン、リキュールなどでも定評があるブランドです。また南アフリカは、サステナブルにいち早く着手した国として知られているのですが、中でもKWVはその先駆け的な存在」とその存在感を分かりやすく伝えてくれました。
そして、今回のスペシャルゲストのKWVチーフワインメーカー・ジャスティン・コランスさんより
「日曜日にステレンボッシュを出発して24時間かけて日本に到着しました。24時間かけて日本に到着しました。長旅ではあったけれど、桜の花が私たちを迎えてくれてとても嬉しい。実はケープタウンで2024年の収穫を終えたばかりで、ホッとしています。私は南アフリカ生まれの南アフリカで育った生粋の南アフリカ人です。ワインバイオテクノロジーを学び、複数国で修行しKWVでワインメーカーをいま務めています。ワインは人々と料理をつなぐ大切な存在で、お客様を魅了するのが私の義務だと思っています。今日のワイン会でも私たちのワインとお料理とのペアリングを楽しんでいただければ」と語り、にこやかに「乾杯」のひとことで宴はスタートしました。
KWVチーフワインメーカー・ジャスティン・コランスさん
今回は通訳としてもサポートいただいたのは高橋佳子さん。ワイン講師・コンサルタントであり南アフリカワイン協会WOSAの日本窓口でもある南アフリカワインのオーソリティ。
南アフリカがワイン生産国といっても皆さんあまりピンと来ないかもしれない方もいらっしゃると思います。私自身(高橋)も2017年に初訪問し、これまで5回訪問したが、まずダイナミックな自然と地形に圧倒されます。ケープタウンは海に近い立地にあり、風がとても強く、また砂漠であるとか暑いイメージがあるかもしれないが、海風がとても冷たいため思っているほど暑くはならないんです。これらの自然や地形、気候条件がブドウが育つ環境を特別なものにしているのです。加えて、行くたびに毎回感じるのは人のパワー、パッション、エネルギー。同様の力強さをワインからも感じてほしい」と高橋さんには特別に南アフリカという産地の魅力に言及いただいた。ワインメーカーのジャスティンさんや高橋さんの南アフリカワインの解説に参加者皆さんのワインへの興味はマックスに高まりました。
画像・右:今回通訳をお願いしたワイン講師、南アフリカワイン協会WOSA窓口でもある高橋佳子さん、左:レカングループ総支配人エグゼクティブソムリエの近藤佑哉さん
では、ワインとペアリングを紹介しましょう。
※ワインコメントはジャスティン・コランスさんに、料理とのペアリングコメントはレカングループ総支配人エグゼクティブソムリエの近藤佑哉さんです。
ラボリースパークリングブリュット✖️アミューズ フォアグラの冷製フランと甘くないカヌレ
ジャスティン:ラボリースパークリングブリュットは瓶内2次発酵のスパークリングワイン。ブドウ品種はシャルドネとピノ・ノワール。瓶内で2年間シュール・リー。このとても甘いマリアージュはとてもいいですね。
近藤:華やかな蜜のような個性に合わせて、アミューズとしてフォアグラのフランはなめらかな食感と甘味で合わせてみました。
クラシックコレクションシュナンブラン(白)✖️エビとバナナと新玉ねぎ
ジャスティン:シュナン・ブランというブドウ品種はフランスが故郷だが、今では南アフリカが多く栽培している国として良く知られています。軽やかで飲みやすいものから、シャルドネのように樽発酵・樽熟成するようなフルボディーのもので長期熟成可能なしっかりとしたタイプまであるんですよ。このアイテムは、ブドウ品種の特徴をストレートに楽しんでいただけるように造りました。シュナン・ブランのトロピカルな香りとバナナの香りが融合がとてもいいです。
近藤:白桃やアプリコットのようなフレッシュなフルーツ、オレンジブロッサムなどのトロピカルなアロマを出しながら、フレッシュな酸味とのコントラストが楽しめるシュナン・ブランには、海老の冷前菜と。実は下にバナナが一切れ敷いてある。
クラシックコレクション ピノタージュ(赤)✖️たけのこ オランデーズソース
ジャスティン:ピノタージュは、ピノ・ノワールとエルミタージュと呼ばれていた品種のサンソーを交配した南ア独自の品種。今では他国でも実験的に栽培を始めていますが、南アフリカのフラッグシップな品種です。ピノタージュのワインは南アフリカ国内でも人気。とくに、南アフリカならではのBBQ「ブライ」をする時、火を付け始め肉を焼き上げるまで待っている間にゆっくり飲むワインがピノタージュなんですよ。今回はお肉ではありませんが、香ばしさと柔らかさがとてもよく合う、これは新鮮な新しい出合いです。
近藤:香ばしい筍のソテーに、ピノタージュのモカのような個性に合わせてコーヒーとミルクの泡を添えました。また、凝縮した赤い果実の香りに負けないようにスパイスも添えて。チーズのトッピングも、ピノタージュのうま味に合うはずです。今回はこのピノタージュと野菜などシェフの末竹さんといくつか奇抜な組み合わせも試してみました。
カセドラル・セラーシャルドネ(白)2022✖️いさき
ジャスティン:このカセドラル・シリーズは、国際的な品種を南アフリカで栽培し、世界の舞台でも通用するレベルまで引き上げたもの。ブドウ品種のクイーンと言われるシャルドネは世界中で栽培されていて、ワインメーカーの個性によりスタイルもさまざまあります。このシャルドネは、石灰質土壌の冷涼な場所で育ったシャルドネを、9か月樽熟成しているので、クリーミーで凝縮感もありながら、上品さも感じてもらえるはず。
近藤:リッチなシャルドネに、鶏白湯のイメージはいわばラーメンのつゆのような出汁に生クリームを合わせてみました。ポーチドエッグを崩して食べると、ワインと食材の「旨味」の相乗効果を感じていただけるはずです。
メントーズ カンヴァス(赤) 2019
メントーズ オーケストラ(赤)2019
✖️鴨 フランボワーズソース
ジャスティン:どのワインもブドウのポテンシャルを表現することが第一。ワイン造りはサイエンスであり、テクニックで造るものだとも言えますが、畑やブドウの良さを出すことがとても大切。ブレンドはワインメーカーにとって、アート作品をつくるようなもの。カンヴァスはローヌ・スタイルのブレンドですが、南アフリカにはローヌのような規制はないから、プティ・ヴェルドを加えるというアレンジを加えています。一方でオーケストラはボルドースタイル。ただ、2%だけカルメネールをブレンドしています。今回の鴨をこの二種類の組み合わせにしたことはとても素晴らしいペアリングだと思います。
近藤:鴨の皮を八丁味噌と蜂蜜も塗り香ばしく炙り、フランボワーズソースを添えたもの。カンヴァスとの組み合わせは、八丁味噌とワインの甘味が広がる組み合わせ。オーケストラは筋肉質な鴨の味わいの深さがワインの風味を引き上げ、鴨の肉質がより感じてもらえるよに考えました。
メントーズ ペロード(赤)✖️ほうれん草のアイスクリーム ブルーベリーのソース
ジャスティン:これはまさに南アフリカならではのブレンドで、私たちは「ケープブレンド」と呼んでいます。30%以上ピノタージュをブレンドすることが必須なんです。ピノタージュは、大学教授で1928年にKWVが設立されてチーフワインメーカーとなったペロードが開発した品種。だから、敬意を評してペロードと命名しています。ピノタージュに、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベックをブレンドし、熟成は100%新樽で18か月。プラムなどダークフルーツの香りがし、バランス取れていて、力強いけれど味わいは柔らかく、タンニンはしっかりとしているので、長期熟成が可能です。
最後にまさかのデザートとの組み合わせにびっくり!しました。ただ総じて、近藤さんやシェフの言う通り、奇抜な組み合わせが多かったけれど、どれもとっても良く考えられていて、驚きの好相性が多かったです。こんなペアリングを考えていただき感謝いたします。
近藤:酸味と甘味の調和がポイントです。ほうれん草のアイスクリームのほの苦みがワインの渋みと、ブルーベリーソースの甘味がワインの果実味とマッチするはずです。
ジャスティン・コランスさんのワイン醸造への熱い気持ちを聞きながらのワイン会。参加したみなさんはコスパの良さに加えて、その味わいの品質の高さを実感いただけて、なかには「箱買いする」といってくださったゲストも。主催者として嬉しいお言葉でした。 今後もワインは「眉間にしわを寄せて飲む」のではなく、楽しい飲み物として食卓を彩ってくれる。それを実感してもらえるようなワイン会をwhy not?マガジン編集部では今後も開催していきます。