写真/篠原宏明 レシピ/石川邦彦(Tribes)
南アフリカワインKWVの魅力について、これまでは「ラグビー」や「産地」の視点から語ってきましたが、今回は「南アフリカ料理」をキーワードに掘り下げてみます。
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南アフリカワインを相棒にラグビー観戦
南アフリカワインは旧世界と新世界のいいとこ取りワイン
レインボーネーションとは見事に南アフリカ共和国を現した言葉
ワインと料理を知るには南アフリカとう国の成り立ちを超簡単にお話しよう。南アフリカはその名の通りアフリカ大陸の南の端にある。太古の昔は国境など無く狩猟や農耕で暮らす人びとがさまざまな集団を作り、常に移動しながら暮らしていた。そこにヨーロッパ出身の人びとが入り込み、それぞれに国の植民地として境界線が敷かれ、それが国境となっていく。南アフリカはオランダとイギリスの植民地として栄えていきます。
さて、南アフリカという国に道をサイや象、キリンが我が物顔で歩いているというイメージを持っている人はまだいるのだろうか?(もちろん、それをウリにしたリゾートホテルやサファリパークはある)。南アフリカはアパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃後、民主化されて約30年、2010年にはサッカーワールドカップも開催され、近代的な街並みがTVなどで何度も放映されたのを覚えているかたも多いだろう。高層ビルがたち、高級リゾート地も整備された近代国家(共和国)である。
テーブルマウンテンが奥に見えるケープタウンのV&A ウォーターフロント
南アフリカ共和国(以下:南アフリカ)は別称で「虹の国・レインボーネーション(Rainbow Nation)」と呼ばれる。この地にはヨーロッパ系、インドやマレーシアをルーツとするアジア系、白人と非白人の血をひくカラード、さらに、肌の色は同じ褐色でも、ズールー族にスワジ族、サン族、ソト族など、さまざまな民族が存在する。公用語は英語をメインに、アフリカーンス語、コサ語など11の言語がある。そう「多民族国家」なのである。この「レインボーネーション」という言葉は1994年に南アフリカ初の完全民主的な選挙が行われた後、アパルトヘイト後の南アフリカを表すためにデズモンド・ツツ大司教が作った造語で、ネルソン・マンデラ元大統領は、1994年の就任演説で、多彩な人種が集まる自国のことを「異なる色が重なり輝く虹のように、多数の人種が融和する国造りを」という願いを込めて、レインボーネーションと言い表している。
多民族の文化と豊かな自然が融合して造られる南アフリカ料理
さまざまな文化が共存しているということは、食文化も例外ではなく、もともとこの地で発祥したもの、植民地時代に影響を受けたもの、そして移民によってもたらされたもの、それらが見事に融合したものなど実に多様性豊かな食文化が南アフリカ料理の真髄なのです。
インド洋と大西洋の2つの海に囲まれ、新鮮なシーフードや質の高い肉料理など食材の宝庫であり、長い歴史の中で育まれてきた郷土料理などバラエティー豊かな料理は、どれも南アフリカ産ワインとの相性は抜群だ!
前回の産地のお話でも書いたが、海からの涼しい風を受け太陽が降りそそぐ地中海性気候がブドウ栽培にぴったりなケープタウンは、南アフリカで最も優れたワインの産地として知られるエリアだ。
もし現地に行かれる機会があれば「パール」「ステレンボッシュ」「フランシュフック」の3つの町には高級リゾートやB&B、アウトドア・アクティビティも充実していておすすめである。とくにパールは南アフリカワイン最大手ワイナリーKWV(ケー・ダブリュー・ヴィ)の本拠地があることで知られる街でもある。
南アフリカワインの繁栄を牽引するワイナリー「KWV」
南アフリカ共和国を代表するワイナリー「KWV」は南アフリカにとって国策商品だったワイン産業の安定化を目的としてケープタウンから北東に約40kmのパール市を本拠地として1918年に設立され、設立当初は政府系企業としてブドウ収穫量の調整やワイン醸造のみならず、栽培農家への資金調達や技術指導、品種改良の実験などさまざまな事業を展開。南アフリカ固有品種ピノ・ノワール種とサンソー(別名エルミタージュ)種を掛け合わせピノタージュ種を生み出したのもKWVの大きな功績の1つだ。
南アフリカのワインは旧世界(ヨーロッパ)の酸味やエレガンス、新世界(南北アメリカ大陸やオーストラリアなど)のフルーティな果実味の両方を兼ね備え、フランスワインが好きな人にとってもカリフォルニアワインが好きな人にとっても両方の人達にも好まれるという「いいとこ取りのワイン」とも言われている。KWVもデイリーに楽しめるカジュアル・タイプから最良ヴィンテージにのみ限定生産するプレミアムワインまでタイプや品種別にさまざまな商品を生み出し、世界中のコンクールで数多くの賞を獲得。
今後も南アフリカのワイン産業を引っ張るリーダーという存在だ。
1918年建造の本社ビル「ラ・コンコルド」は街のランドマークになっており、施設が充実したワイナリーを備えている。
KWVのサイト
https://www.kokubu.co.jp/brand/liquors/kwv/
南アフリカ料理店 荻窪・トライブスの石川邦彦さんオススメのペアリング&レシピ
多文化が融合した食文化ではあるが、あえて代表的なものをあげると「ブラーイ」という人も多い。「ブラーイ」はアフリカスーン語で「焼く」という意味、そう「BBQ(バーベキュー)」だ。シーフードから多種類の肉がそろう南アフリカならば、これで盛り上がるのも納得だ。炭火焼の屋台が街のあちこちにあるので、それとピノタージュやカベルネ・ソーヴィニヨンなんて最高だろう。特にブルヴォルスという長いソーセージは名物だ。では、荻窪の南アフリカ料理店「トライブス」のオーナー石川さんにオススメの料理を教えてもらおう。合わせるワインもKWVのラインナップから選んでもらった。
ブルヴォルス
南アフリカ料理の魅力は先住民の食文化、そこに宗主国だったオランダやイギリスの肉文化、入植してきたインド系やマレー系のスパイス文化や煮込み文化が融合していった、まさに「レインボー」に溢れた魅力に尽きる。今回は私の三大オススメ料理(実は絞り込むことは悩みましたが……)をレシピも紹介しますので、ぜひご家庭でチャレンジしてください。そして、もっと興味が沸いたら、ぜひ私のお店「トライブス」にお越しください(石川)。
KWV ピノタージュ×チャカラカ
チャカラカは南アフリカで金鉱が見つかり、ゴールドラッシュに沸いた時代その労働者たちの街で生まれたともいわれる野菜や豆をスパイスとともに煮込んだスープ。
味付けはスパイシーさを強くしても辛味えを強くしてもお好みで味変してみて欲しいですね。南アフリカではでは、「この料理は超手抜きするならキャンベルのような出来合のトマトスープにベイクドビーンズ買って、人参刻んで終わり」なんて簡単バージョンもあります。
KWV クラシック・コレクション ピノタージュ 赤
産地:南アフリカ/西ケープ
品種:ピノタージュ100%
希望小売価格:1,250円(税別)
カフェ・カルチャー 赤
産地:南アフリカ/西ケープ
品種:ピノタージュ100%
希望小売価格:1,750円(税別)
ピノタージュはピノ・ノワールとサンソーとの交配によって産まれた南アフリカ独特のブドウ品種。ピノ・ノワールの果実味、サンソーのたくましさを兼ね備え果実の香りが豊か、樽熟成によって複雑な風味が生まれコクのある味わいがトマトベースの味わいとスパイシーさにマッチします。
カフェ・カルチャーはKWVの技術力を駆使して編み出した特殊製法による華やかなコーヒーの香りと味わいがしますが香料などは一切使用していない。
チャカラカ Recipe
【材料】
キドニービーンズ 乾燥 50g
トマト 大2個 (あるいはトマト缶x1)
玉ねぎ 中1個
ピーマン 2個
パプリカ 1個
ズッキーニ 1本
人参 1本
スイートバジルかローレル 少々
スパイス
ニンニク すりおろし 大さじ1
ショウガ すりおろし 大さじ1
チリ パウダー 少々
黒コショウ パウダー 少々
コリアンダー パウダー 少々
ターメリック パウダー 小さじ1
クミン パウダー 小さじ1
タイム パウダー 少々
ガラムマサラ パウダー 少々
【作り方】
①乾燥豆は前日から水につけておき、当日3~4分ボイル※水煮のされた缶詰の豆でももちろんOK
②野菜は全て一口大にカット
③豆、トマト以外の野菜をフライパンで柔らかくなるまで炒める
④スパイスを入れて混ぜる※ローレルもあれば入れる
⑤水を少し加えて全体になじませる
⑥豆、トマトを加える
⑦タイム、ガラムマサラで味を調え、スイートバジルがあれば飾る
※コンソメかブイヨンなどを使うと味も安定します。
KWV シュナン・ブラン×バニーチャウ
バニーチャウは、南アフリカ共和国のファストフードで、食パン一斤を大胆にくりぬき、カレーを詰めた料理。パンを食器代わりにして持ち帰ったというルーツがあるそう。パンをちぎってつけながら食べる豪快な一品。今回はトライブスのレシピですが、カレーはご家庭の味でOK。
KWV クラシック・コレクション シュナン・ブラン 白
産地:南アフリカ/西ケープ
品種:シュナン・ブラン100%
希望小売価格:1,250円(税別)
南アフリカ共和国では最もポピュラーな白ブドウ品種のシュナン・ブラン。透明がかった淡い麦わら色、メロンなどのニュアンスのある香り、口中には微かな酸味を豊富な果実味が優しく包みこんでいます。すっきりとした飲み心地のワインはカレー時のスパイシーさも柔らかく包み込んでくれます。
バニーチャウ Recipe
【材料:(1人前目安)】
食パン(切れていないもの) 1/2斤
牛 または鶏肉 100g
ひよこ豆 10g
玉ねぎ 1/6個
トマト 1/4個(またはトマト缶1/6)
ニンジン ジャガイモ 好みで
トマトジュース 100cc
調味料
塩、コショウ 少々
おろしニンニク 小さじ1
おろしショウガ 小さじ1
カレー粉 20~30g
ターメリック 少々
クミン 少々
ガラムマサラ 少々
①食パンの中身をくり抜いておく
②中身のカレーを作る
②-1 牛、または鶏肉を炒める
②-2 塩、コショウで下味をつける
②-3 おろしニンニク、おろしショウガ、玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモ(あれば)を入れてさらに炒める
②-4カレー粉 ターメリック クミン でカレーの味を調え、トマトジュースを足して煮込む
②-5 再度カレー粉 ターメリック クミン で味をつける
②-6 ひよこ豆を入れる(乾燥の場合は一晩水につけてから5分ほどゆでる)
①のパンに②のカレーを入れる
※パンを軽くトーストするとさらによい
最後にガラムマサラを軽く振りかける
最初にくり抜いたパンの中身を横に添えて完成
KWV メントーズ カンヴァス×ボボティ
ボボティはミートローフの原型ともいわれ南アフリカ共和国の国民食として親しまれている一品です。肉と野菜、ドライフルーツなどを混ぜ合わせて容器に敷き詰め、オーブンで焼きます。外観もミートローフとは異なりグラタンのようなこの料理は昔、南アフリカに働き手として連れてこられたマレー系の人々が創り上げたケープマレー料理と呼ばれるカテゴリーの中の一つです。個人的にはレインボーネーションには他民族でも見事に融和しているという意味合いがあると思うけど、まさにこの料理は肉、野菜、スパイス、卵と多彩な素材が喧嘩せずにひとつの美味しい料理になっているところが南アフリカワインの郷土料理らしく、造るのにすこし手間がかかるけれどごちそうの一品としてとしてオススメします。
KWV メントーズ カンヴァス 赤 2019
産地:南アフリカ/西ケープ
品種:シラーズ58%、プティ・シラー30%、プティ・ヴェードル6%、ムールヴェードル6%
希望小売価格:4,010円(税別)
ブドウ品種毎に最適な畑を選択。収穫は完全手摘み。更に最良の房のみを選別。ブドウ品種ごと別々に発酵を行い選別。最良タンクのみメントーズ用の樽熟成へ回す特別仕様。ダークチェリーやプラムやクローヴのアロマが広がり、口に含むとベリーやシナモンが甘味のあるタンニンと合わさって、凝縮感のある味わい。ボボティのさまざまな材料(肉、野菜やスパイス)の豪華な味わいにカンヴァスの複雑な味わいはまさにぴったり。
ボボティ Recipe
【材料 一つ分】
ベース部分
挽き肉 (牛、豚、マトン等) 600g
みじん切り玉ねぎ 小1個
おろしニンニク 小さじ1
おろしショウガ 小さじ1
リンゴ 1/2個 5mm角くらいに切る
細かく砕く アーモンド 30g
軽く刻む レーズン 20g
バター 10g 、カレー粉 30g
ガラムマサラ 5g、ターメリック 10g
塩 5g、パン粉 30g
上部分
生卵 2個、牛乳 50cc
あれば ローレルかスイートバジル
ソース ※味を見ながら混ぜる
イチゴジャム 100g
チキンコンソメ 小さじ1
おろしにんにく 小さじ1
チリパウダー 少々
【作り方】
① フライパンを熱してバターを入れ、玉ねぎをほんのり色づくまで炒める
② ①をボウルに取り出し、ニンニク、生姜、挽き肉、パン粉(10g)を入れてよく混ぜる
③ ②にカレー粉、ターメリック、塩、林檎、レーズン、アーモンドを入れて
全体を軽く混ぜ合わせ、ぎゅっと押し付けるようにオーブン皿に詰める
④ 別のボウルに卵を溶いて牛乳と混ぜ、③の上にゆっくり流し込む
⑤ ローレル、スイートバジルがあれば乗せ、残りのパン粉、ガラムマサラを
振りかける
⑥ ⑤を180℃のオーブンで約20分焼き、まだ卵液に火が通っていなかったら
様子を見ながらさらに焼く
⑦ ソースの材料を混ぜておき、オーブンから取り出した⑥にかける
Tribesのオーナー・石川邦彦さん南アフリカ共和国の先住民のお面や小物といった雑貨に興味を持ったのが始まり。
https://ameblo.jp/tribes/
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