取材・文・写真(一部)/山田 久美子 写真/小松 勇二
世界有数のワインメーカーとして不動の地位を誇るオルネッライアが手掛けるイタリア最高峰のワイン「マッセート」の2021年ヴィンテージが、イタリアだけでなく世界中で販売開始となったことは先日記事にあげましたが、今回は創業一族のランベルト・フレスコバルディ社長と生産管理マネージャーのマルコ・バッシメリさんが来日されて開催されたセミナー後にセッティングされた、とてつもない豪華な試飲ディナー会に参加できる幸運に恵まれたのでレポートします。
前回の記事はこちら
https://www.whynot-web.jp/wine-masseto20241001/
マッセートについて改めてお話しすると、マッセートの畑はトスカーナ州南西部地方の沿岸にある小さな村ボルゲリのティレニア海を見下ろす村の緩やかな丘に位置しています。
その始まりは、土地の前例からぶどうは育たないと予想や反対意見があったものの、この地こそがぶどう栽培の理想の地であるとの直感を信じ1980年代のはじめにぶどうを植えたこと。
直感は見事に的中し、青色粘土層、ティレニア海の潮風、海面からも反射する豊かな陽光の恩恵により、エレガントで力強く複雑さを備えた、トスカーナの個性が色濃く表れたワインが完成したのです。
この青色粘土層の中のミネラル分は自重と同じ質量の水分を吸収できることから、乾燥して気温が最も高くなる夏期でもぶどうの根に適度に水を供給し、ミネラル分を与えて根を高温から保護する効果があるんです。春の雨を十分に吸い溜めて水分が不足する夏に放出できるという自然の力、素晴らしく神秘的でもありますね!
また2017年より、セカンドラベルの「マッセティーノ」をリリースしています。
セカンドと言っても、比較的若い樹齢のメルローとカベルネソーヴィニョンの区画のなかでマッセートのレベルにはまだ達してないけれどはっきりとしたポテンシャルがあり、マッセート用のワインのうち使われなかったワインと一緒にすることで個性を発揮するぶどうを使用しています。なので、マッセートと同じDNAが受け継がれており力強い個性を持つ、マッセートの偉大な片鱗を感じさせるワインとなっています。
マッセートとマッセティーノは、どちらも同じように「畑の力を最大限に引き出すこと」と「人間の介在を最小限にとどめること」の2つを軸として、人間が考えたプロセスをぶどうに強制するのではなく、自然のプロセスに人間が寄り添うことで自然の恵みであるぶどうに最大の敬意を払い造られています。
そのため手作業や自然の力を活かす工程が多いことから、非常に限られた本数しか生産できずとても貴重なワインとなっています。
そんなマッセートを十分に味わい尽くすことができるディナー会が、ランベルト社長と生産管理マネージャーのマルコ・バッシメリさんを囲んで開催されました。
場所は大手町の「Otemachi One」に独立型で出店している「CYCLE by Mauro Colagreco(スィークル)」。
南仏マントンの3星レストラン「ミラズール」が日本初進出した、日本の食材で織り成すモダンフレンチで、自然の美しさとサイクルを表現していることが特徴のレストランです。
今回は以下のヴィンテージがマグナムボトルで提供されるペアリングディナーという、なんとも贅沢な!
マッセティーノ2022年 マッセート2021年 イチジク/トリュフ/和牛
レアな状態の和牛にイチジクのソース、上にはたっぷりとスライスしたトリュフ
マッセティーノ2022年は、夏にも十分な雨に恵まれ9月には昼夜の温度差がしっかりあったことから、糖分とアロマ、タンニンのバランスが非常に良く、陽光をたっぷり浴びたことで芳醇な香りに満ち、長く続く余韻には力強さも感じられます。
マッセート2021年は、8月~9月と雨が降らず乾燥した天候が続きましたが、先述した土壌に溜まっていた春の雨によりぶどうの木が過度にストレスを受けることはありませんでした。このことで凝縮度に富んだ高品質のぶどうが育ち、生命力のある官能的な魅力に富んだアロマと果実味がいつまでも続くワインとなりました。
どちらもしっかりとした果実味と力強さがあるので、和牛の脂身やトリュフの香りにも負けることなく、イチジクとは味わいが一体化してその余韻を長く楽しめました。
マッセート1996年 菊芋/ヘーゼルナッツ/アンコウ
淡白なアンコウに濃厚なソース、菊芋の皮を揚げたものとキノコ添えアクセントとしてヘーゼルナッツ
マッセート1996年は、9月の初めに気温が急上昇したことで完熟したぶどうが育ち、凝縮度の高い華やかな果実味があふれ、タンニンは控えめのまろやかな味わいとなっています。
30年近く前の年代なのでもっと複雑な味となっているかと思いきや、ファーストアタックからフレッシュで豊満な果実味が感じられたことに驚きました!いつまでも、ワインだけでも飲んでいたくなる、素晴らしいワインです!!
アンコウとも相性良く、スルスルと飲んでしまいました。
マッセート2006年 牛蒡/オレンジ/恵鴨
マッセート2006年は、4月~8月までほとんど雨が降らず小ぶりなぶどうとなりましたが、
成熟期には理想的な天候に恵まれたこと、また房が小振りであったことから非常に凝縮度の高いワインが出来上がりました。 口に含むと熟した果実味に溢れて、まろやかだけとしっかりとしたタンニンが絶妙なバランスで、鴨のジビエ感にも負けることなく美味しく飲めました!
芳醇な赤ワインが続くと、少し重たく感じて飲めなくなるかな?
など思っていましたが、とんでもない!
どのヴィンテージも余韻は長いけれどフレッシュで、最後まで飽きることなく新鮮な気持ちで飲み続けることができました。
マッセートの目標は、次世代のために自然環境と社会環境を残すだけでなく、より良い状態で残すことにあるとのこと。
これからも持続可能なワインとして、また現状維持ではなく未知なる世界への冒険と新しい発見をし続けるマッセートのワイン造りに期待が高まります!