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WINE

「ナニっ!? このワイン、美味しい!」と言われるに決まっている1本の話

「New Chapter」は特別なワインだという理由

オーストリアでは珍しい石灰質のニーダーエスタライヒ州のトライゼン川流域に広がるトライゼンタール(丘陵の中腹にある東向きの畑)

「グリューナー・ヴェルトリーナー」と言われて、それが何を意味する単語かおわかりだろうか? ワイン好き以外の認知率はかなり低いかもしれない……、おっと、知らなくても大丈夫。まずはちょっと説明しますね。
「グリューナー・ヴェルトリーナー」(以下G.V)は白ワイン用のブドウ品種の名前。オーストリア(オーストラリアではない、Noカンガルーの方ね)の固有品種で、オーストリアにおけるワインブドウ畑の栽培面積のうち、このG.Vが3割を占めていると言われている。オーストリアでは最も広く、かつ多く栽培されているこの品種は、自国で愛されるあまりこの品種を使ったワインの90%はオーストリア国内、ドイツ語圏内で消費されてしまい、輸出されるのは残りのたった10%。これでは一般ユーザーの認知が遠くなるのも当たり前。そのためか、日本ではどちらかというと玄人の方々に好まれていた側面もあった。

「グリューナー・ヴェルトリーナーを世界へ、2人のオトコが立ち上がった」

画像・左 レンツ・モーザー。モンダヴィのヨーロッパ担当のマーケティングを経て、この事業を継承。また、彼の父親は1978年にバイオダイナミックスを持ち込んだ先駆者である。画像・右 マルクス・フーバー。レンツより15才年下ではあるがレンツの考え方や哲学に共鳴している。

全世界がコロナ真っ只中のとき、ある2人のオトコが電話で「G.Vを使って世界トップクラスの白ワインを生み出そう、この品種の素晴らしさを多くの人々伝えよう」と話し合い気持ちがシンクロした。そのふたりがレンツ・モーザーとマルクス・フーバーだ。
レンツは父と二人三脚でG.Vをオーストリア国内で1980年代より広めていき、彼の祖父レンツ・モーザー3世博士(同前)は、1950年代「ハイカルチャー仕立て」というぶどうの仕立て方を開発しG.V生産を拡大させた、いわば立役者でもある。彼の家系はこの品種をオーストリアに広めたと言っても過言ではないわけで、愛は深まるばかり、さらに高みを目指そうとするのも言わずもがなである。
パートナーのマルクス・フーバーはトライゼンタールで10世代続く栽培醸造家。2015年ドイツ専門誌で最優秀醸造家に選ばれてもいる。名実ともにオーストリアのトップ10生産者の一人としての地位を確立している。その2人がパートナーを組んだわけだ。これ、意外とすごいことで、例えばホンダ技研とトヨタ自動車がタッグを組んで新しいEVを開発するくらいのインパクトだ。

世界水準のワインを目指すスペシャルなワイン誕生へ ベンチマークを定める

「世界で認められるG.V種のワインを造りだすのだから、世界の名だたる白ワインと同じカテゴリーに入るものでなければならない」「国際的に愛される白ワインはどんなスタイルなのか?」をまず彼らは見定めた。ベンチマークワインは「ニュージーランドのクラウディ・ベイ、ボルドー(ペサック・レオニャン)のシャトー・カルボニューなど7種類」。

そして、2020年に初ヴィンテージ「ニュー・チャプター(New Chapter)2019」が御披露目された。この「ニュー・チャプター」は、従来のG.Vと何が違うのか? ブドウ産地は、オーストリアでは珍しい石灰質のニーダーエスタライヒ州のトライゼン川流域に広がる、このトライゼンタールが大半を占める。黄土で栽培されることが多いG.Vがここだけ石灰質土壌に植えられている。世界に出て行くにはこのテロワールと冷涼な気候が相まって生み出される、ミネラル感があり生き生きとして爽やかな酸のあるブドウに辿り着く。G.Vが目指すべき新しいスタイルは「しっかりとした果実味、フレッシュさがあり、飲みやすい。パワフルだけれど豊満ではない」国際的に認められている白ワインとそこが決定的に「違う」ポイントと断言している。言い切れるところが、これまたすごいところだ。

そして今回、最新ヴィンテージをレンツ・モーザーが来日し、一緒に試飲する機会を得た。その「ニュー・チャプター 2022」はさらに深化と進化が進んでいた。2人はさらにフィネスとエレガンスが必要と2つの変化を加えた。一つはスパイスとして、10%のみ225リットルのフレンチバリックで6カ月熟成したこと、もう一つ「ソーヴィニヨン・ブラン」「シャルドネ」「ミュスカデ」「ピノ・グリージョ」などを各1%ずつブレンドしたという。これによって石灰質のテロワールと相まって、さらに世界水準を超えた素晴らしいワインができあがったわけだ。
最後に彼らのワイン造りが目指す合い言葉は
「明日のグリューナー・ヴェルトリーナーを今日。10年先を見越したスタイルをボトルの中に表現する」。んー、なんてハンサムなワインを目指したお言葉。あっ、これはもちろん常に変化を続けるという意味だけど、レンツさんは「いま飲んでさらにもう一杯のみたい、また飲みたいと求められるワインを造り続けていきたい」と今飲みたいワインラヴァーにも素敵な言葉を残してくれた。

最後に、彼らのこだわりは味わいにとどまらない、ボトルの形状、エチケットの色彩もこれまでのオーストリアのそれとは一線をひくオシャレさと自己主張に溢れている。彼らのプレゼンからはたびたび「スティーブ・ジョブス」の言葉が引用される。彼らが「ニュー・チャプター」完成へこだわりは「自分たちをやり方で、惑うことなく造りたいワインを造る」、さしずめジョブズが語った最後の言葉”Stay hungry, stay foolish”(自分の志を信じ、愚直に進め)なのだろう。
どんどん、暑くなるこれからの日本。残念ながら日本はカラッとした夏ではない。そんな暑い昼下がり、夕涼み、夜の帳が下りたあと、このワイン「ニュー・チャプター 2022」は暑さを忘れさせてくれて、食事にも寄り添ってくれる最高の相棒になるはずだ。

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