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WINE

ニュージーランドの心地よい風のようなワイン「ブラック・エステート」を満喫した夜(ペアリングディナー)

ニュージーランドのワインブランド「ブラッケエステート」のブラック・エステートのペネロペ・ナイシュさんと夫でありワインメーカーのニコラス・ブラウンさんが来日。THE UPPER(大手町)にて、Why notマガジン読者とのペアリングディナーが開催された。


文(ブランド解説・ペアリング)/名越 康子

「ブラック・エステート」というワインの魅力とは。
まさに自然体で心地良いクリーン&ナチュラル、そしてクールなワイン
ブラック・エステート

今では「ナチュラル・ワイン」とか「自然派ワイン」という言葉のもとに販売されているワインが日本でも多くある。
しかし、そう呼ばれるワインには様々な「個性」がある。
本当に美味しい、「ナチュラル」なワインは、「自然」にはできない。
つまり、人間が細心の注意を払いながら、「自然」を感じながら、「自然」と共生しながら、情熱を持って造らなければ出来上がらない。
と、思う。

このブラック・エステートのワインは、どれを飲んでも素直に美味しい。
しかも、このワイナリーがあるニュージーランドの心地良い風景を思い浮かべられるような香味があり、年々進化しているように思う。
ニュージーランドの南島の北東部、ノース・カンタベリーにあるブラック・エステートはいわゆる「ドメーヌ」で、自社畑のブドウだけを使っている。
かつてブドウを購入していた畑も入手したからだ。

3つの畑のうち、ネザーウッド畑は、1986年に植樹されている。
若いワイン産地であるニュージーランドにおいては、古木とされる範疇にある。
急がず、無理をせず、しかし毎年じっくりと着実に発展し続けているワイナリーだ。
この様子が見事であり、また親近感を呼ぶ。

2007年にブラック・エステートのオーナーとなったナイシュ家の2代目ペネロペ・ナイシュは、敷地内でレストランも経営している。二児の良き母でもある。夫のニコラス・ブラウンはワインメーカーを務めており、畑の管理もすべて取り仕切っている。
互いに敬い合い、それぞれの得意な分野を担当し役割を果たしている様子も、自然体である。


良いワインは良いブドウから、というが、良いワインは良きブドウの手入れをする人の手から生まれる、とも言うべきだと改めて感じた。

当初からずっと畑ではオーガニック栽培を行い、2017年にはニュージーランドのオーガニック認証BioGroを取得。2022年にはバイオダイナミックの認証、デメテールも取得している。

キャンセル待ち希望も多数、読者のブラックエステートへの興味と期待も最高潮

約1か月前にこの日の参加者募集の告知をスタートしたが、3日ほどで定員に達し、さらにキャンセル待ちも多く、お店に無理を言って会場ギリギリ以上に席を用意することに。読者の期待はやはりワインのクオリティの高さと今回のラインナップだろう。ペアリング・ディナーにオンリストされたワインは以下の通りだ。


ネザーウッド ペット・ナット 2020
トレブル ロゼ 2021
ダムスティープ リースリング 2022
ホーム ピノ・ノワール 2020                       
ネザーウッド ピノ・ノワール 2020
ダムスティープ ピノ・ノワール 2020&2016
簡単に解説すると、昨年発売開始したばかりのペットナットから始まり、無清澄、無濾過で造られる、辛口のリースリング、3つの畑から収穫されたピノ・ノワール、リースリング、カベルネ・フラン、シュナン・ブラン、シャルドネで造られたロゼ。ピノ・ノワールは、まず3つの自社畑の違いを同じヴィンテージで飲み比べというわけだ。「ブラック・エステート」の全てを堪能できるセレクトなのである。

各ワインの解説はもちろん醸造家でもあるニコラスさんが解説、また書くテーブルでも夫妻はフランクに話しかけ、参加者からの質問にも真摯に答えてくれた.ペアリングのポイントはTHE UPPERのシェフソムリエ石井賢さんが解説してくれました。
ペアリングは以下

ネザーウッド ペット・ナット 2022 × オイルサーディン

3つの畑のうち「ネザーウッド」畑のピノ・ノワールとシャルドネを用いたペット・ナット。自生酵母だけを使用して、12か月と長くシュール・リー(瓶内でオリと接触。通常のペット・ナットでここまで長くシュール・リーは行わないが、この畑は古木で複雑性あるブドウが得られるため、長めに行っているとのこと)。
ソフトな口当たりでうま味の感じられるペットナットに、オイル・サーディンの塩っぽさと爽やかな酸味がとても良く合う。

トレブル ロゼ 2022 × パテ・アン・クルート

豚肉、鶏肉、レバーなど複数の肉類で作ったパテを、パイ生地で包んで焼いたもの。家のような形状のパイ包みには煙突がある。焼いている間に上の部分に空間ができて、パテの肉汁がグツグツと登ってきてその空間に自然に溜まるそうだ。びっくり!
相方となる「トレブル ロゼ」は、このワイナリーのワインの中で唯一3つの畑のブレンドをしているシリーズ。ノース・カンタベリーという産地そのものを表現するために2018年から少量だけ造っているという。ブドウ品種は3週間かけて収穫した5品種を、早く収穫したブドウから順番に同じタンクに入れていき、一緒に醸造している。この2021年は、ピノ・ノワールが一番多く、次にリースリング、シュナン・ブラン、シャルドネ、カベルネ・フランを使っていて、ブレンド比率は毎年変わる。 リースリングらしいアロマティックさがありながら、ストロベリーのような香りもあり、ほんのりとしたタンニンもある。これまでに出会ったことのないロゼで、複数の肉類を使った冷前菜にピッタリ。

ダムスティープ リースリング2022 × シチリアパスタ

シチリアらしい、カラスミ、アンチョビ、松の実、レーズン、それにレモンの香りも添えたパスタ。リースリングの香りや酸味を意識した一皿だという。
「ダムスティープ」畑はとても急斜面で、その下方にある粘土質が多い区画でリースリングを栽培している。もともと酸が高いリースリングは収穫のタイミングがとても重要で、酸と熟度のバランスがとても重要だという。9か月熟成させてから瓶詰め。これもほかのアイテム同様に、清澄も濾過もせずに瓶詰めしている。

そして、ブラック・エステートの看板とも言えるピノ・ノワールは、同じヴィンテージの畑違い、同じ畑のヴィンテージ違いでサーヴィスされた! まずは同じヴィンテージの畑違い。

ホーム ピノ・ノワール 2020 & ネザーウッド ピノ・ノワール 2020 × サクラマスのポワレ ソースヴァンブラン

魚と赤ワインを合わせるために、白ワインソースだけれど、魚の出汁をプラスしてコクを出した一品。
「ホーム」畑は、粘土質が豊かな土壌なので、ワインには力強さが出る。一方で「ネザーウッド」畑は、1986年植樹で古木であるとともに砂岩土壌のため、複雑性が醸し出され香りが華やぐ。
2020年は、順調な生育をしたヴィンテージで、夏から秋にかけての日較差が大きかったことから、心地良いテクスチャーとフレッシュさのあるワインができたヴィンテージだという。

そして最後は、同じ畑のヴィンテージ違いが登場

ダムスティープ ピノ・ノワール 2020 & ダムスティープ ピノ・ノワール 2016 × バベットステーキ ソースベアルネーズ

牛肉のハラミのステーキに、卵黄とオイルを攪拌したフランスの典型的なソース、そしてフレンチフライのコンビネーション。
「ダムスティープ」畑はとても急斜面なので、ペネロペの母がこの畑に命名した。そしてこの畑の土壌は石灰質が豊か。これらの要素が合わさって、エキゾチックなアロマ、そしてテンションのあるタンニンが備わっている。2020年の若々しい姿も魅力的ながら、少し落ち着いてタイトながらも滋味豊かさがジワジワと出始めている2016年も素晴らしい!
ノース・カンタベリーという産地は、冷涼なニュージーランドの中でも冷涼であるということもあり、若いうちは少しシャイに感じられるかもしれない。しかし、ブラック・エステートの丁寧な栽培、ブドウの個性を尊重したワイン造りも相まって、出来上がってから1年、2年と経過していくに従い、少しずつ香りも味わいも解けていき美しさを増すばかり。
ワイナリーのレストランでは、やはりオーガニック栽培の地元の野菜、一本釣りの魚、ジビエなどを使った料理を提供しているという。ワインを飲むと現地に飛んで行きたくなるかもしれない。

最後は、参加者それぞれのグループと記念写真を撮影して、ペアリング・ディナーはお開きへ。オーナー夫妻にとって日本の一般の方々とコミュニケーションをとる機会はとても貴重なこと。リアルなワインの感想を聞けたり、またTHE UPPERのペアリング料理を絶賛してくれました。
そして、参加者の皆さんからは、今すぐにでも買って帰りたい、本当に美味しいワインの出合えて、最高だったという感想をいただいたことが何よりでした。

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