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至高のブラン・ド・ブラン「サロン」最新の2013年ヴィンテージを近藤佑哉ソムリエとディディエ・ドゥポン(サロン・ドゥラモット社長)が唎く

取材・写真・文/柳 忠之

その希少性からしばしば「幻の」と形容されるシャンパーニュ「サロン」。単一ヴィンテージ、シャルドネのみの単一品種、そしてル・メニル・シュール・オジェの単一クリュ。年も品種もクリュもすべてアッサンブラージュを常とするシャンパーニュにおいて、すべてが「モノ(単一)」という異色のシャンパーニュだ。120年におよぶサロンの歴史の中で、44番目にリリースされるのが最新の2013年。サロン・ドゥラモット社長のディディエ・ドゥポン氏のリードのもと、「銀座レカン」のシェフソムリエでレカン・グループの料飲統括マネージャーを務める近藤佑哉氏がテイスティング。その真価を探る。


近藤佑哉(以下、近藤)サロンはブラン・ド・ブランを代表するメゾン。シャルドネのクオリティについて、いっさい妥協を許さない姿勢とうかがっています。

ディディエ・ドゥポン(以下、ドゥポン):もちろんです。グラン・クリュのル・メニル・シュール・オジェにある15軒の農家と契約し、最高の19区画からブドウの供給をいただいてます。それに加えて、メゾンの裏手に「ジャルダン」と呼ばれる1ヘクタール弱の自社畑があり、そのブドウも使います。

近藤今回リリースされた2013年ヴィンテージはどのような年でしたか?

ドゥポン:2013年は過去10年で唯一10月に収穫をした年となりました。正確にいうと、10月2日に収穫を始めています。この年の気候条件はかなり厄介で、寒く湿りがちの天候が冬から春まで続き、その後は気温が高く、9月は良い天気が続いたので収穫が救われました。それでも厳しいブドウの選別が必要だった年です。

近藤:香りは洋梨、白桃、ミラベル。白い花の華やかな香りに加えて、カマンベールチーズやマッシュルームなどグルマンな香りもむんむんと立ち上ってきます。味わいはサロンを象徴するような、ピンと張り詰めた酸がしっかり背骨となっていて、その酸にミネラルが溶け込んでいますね。

ドゥポン:そのとおりです。酸はサロンの証ですから。近藤さんのおっしゃるとおり、香りはフローラルで白い果実も十分に広がってきています。通常のサロンなら若いうちは固くて、飲みにくいものですが、2013年は今でもとても飲みやすい。これは1983年を思い起こさせます。1983年も同じようにすぐ開きましたが、その後、一旦閉じてしまいました。2013年も同じパターンではないかと想像しています。理由は説明できません。ワインは生き物ですからね。


近藤:30年経って同じようなスタイルが繰り返される。面白い現象ですね。ところで2013年のサロンに合わせる料理ですが、アクセシブルなキャラクターも備えているので、スタートから肉料理まで一環して通せる幅の広さ、社交的な印象があります。

ドゥポン:そうですね。子牛などの白身肉やキノコ類、もちろんチーズとも合わせられます。クリーミーなタイプではなくハード系のもの。熟成したコンテやパルミジャーノ、ミモレットもおすすめです。

近藤:先ほど1983年ヴィンテージの話が出ましたが、私が過去に飲んだサロンでは1999年に感動しました。そのフレッシュさにとても驚かされました。

ドゥポン:1999年は太陽の年で、リリース当初から完璧。今もその状態が続いています。熟成による変化が少なく、年を取らない印象です。じつはそれもサロンの大きな特徴といえる部分で、熟成が激しく進むことはまずないんですよね。いつも若々しく、どのヴィンテージでも熟した柑橘のニュアンスが感じられるのがサロンらしさ。ベルガモットの香りもサロンの全ヴィンテージにありますが、この2013年にはひと際強く感じられます。

近藤:ところで、2013年はこんなに若いうちから飲みやすいのですが、この後の長い熟成にも耐えられるのでしょうか?

ドゥポン:2013年は熟成ポテンシャルも申し分ないでしょう。似ていると言った1983年はすでに40年が経っています。私はしばしば1983年を飲むことがありますが、いつ飲んでも素晴らしい。2013年を今から30年後に飲んでも、現在の1983年と同じ感動が味わえると思います。サロンは熟成に価値がある。時間をかけることが大切です。

近藤:サロンはガストロノミックであると同時に繊細なシャンパーニュなので、グラスと温度にはとても気を使います。フルートでは香りが開きませんし、大ぶりのグラスでは飛んでしまう。料理に合わせて1℃単位で供出温度も考えなければなりません。ソムリエとしての資質が試されるシャンパーニュですね。サービスのたびに背筋が伸びます。

ディディエ・ドゥポン(写真・右)
1964年、ロワール地方のトゥール市出身。1986年にローラン・ペリエ入社。国内外のコマーシャル部門に従事した後、1997年、当時33歳の若さでサロン・ドゥラモットの社長に抜擢された。
近藤佑哉(写真・左)
1989年、兵庫県生まれ。2012年、「銀座レカン」に入社。数々のソムリエコンクールで受賞し、2020年の全日本最優秀ソムリエコンクールでは3位入賞を果たす。現在、レカン・グループの料飲統括マネージャー。

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