文/山田 靖
気温もどんどん、どんどん上昇していく。今年も猛暑は間違いないだろう。さぁて、日中全身に受けた紫外線やクーラー疲れした身体と脳を癒やすワイン(ちょいと強引!?)は何だろう? やっぱりスパークリングワイン、いやいやソーヴィニヨン・ブラン、軽いピノ・ノワール……、んー、どれを選んでも満足しそうですが、今回は「リースリング」をご提案しようと思います。選んだワインはドイツの老舗であり名門「シュロス・ヨハニスベルク」です。
「リースリング」といえば「シュロス・ヨハニスベルク」、「シュロス・ヨハニスベルク」といえば「リースリング」というくらいそれなくしては語れないワイナリーなのである。その理由をちょいと説明いたしましょう。
ドイツの最高級品質ワインの銘醸地と知られるラインガウの中心地ヨハニスベルクに位置する「シュロス・ヨハニスベルク」については817年に皇帝ルードヴィヒ1世が畑を所有していたとの記述が公文書に記されている、ということは約1,200年にわたりブドウ栽培が行われ、1720年リースリングの苗木が大量に植樹され、リースリングのみが栽培されている(約300年)世界最古のリースリング・ワイナリーと言われている。
畑は北緯50度、全て南向き、45度の傾斜(陽当たりベストな傾斜)、海抜は114~182m。昼夜の寒暖差もあり、それが凝縮した香りと深い味わいを備えることになり、ブドウの育成・品質にとって素晴らしいテロワールなのである。
その後、第二次政界大戦禍で一部が破壊されたが1971年ワイン法により単一畑と認定され、現在、世界で最高のリースリング・ワイナリーの1つと言われている名門中の名門だ。
左の画像が貴腐したブドウ
1755年収穫開始が大幅に遅れ、熟れすぎたブドウから“貴腐菌”への知識が備わり「シュペートレーゼ(遅摘み法)」の発見につながり、新しいワインのスタイルを造り出したのもシュロス・ヨハニスベルクだ。ちなみに「シュペートレーゼ」とはドイツワインの品質等級のひとつ。「遅摘み」を意味します。通常の収穫時期よりも最低1週間以上遅く、しっかりと成熟したブドウから造られるワイン。地域の決められた果汁糖度をクリアしたブドウを使用し、濃度は高くなるけれど、甘口のワインとイメージしがちだが、さにあらず辛口から甘口まで、ワインはある。
また、収穫はすべて手摘み、オーガニック栽培、SDGs認証の申請ををしていて今年度中に取得予定とのことで、環境対策にも注意を払っている。
「リースリング・ワイナリー」としての矜持を持ってブドウを育て醸造する「シュロス・ヨハニスベルク」。飲むべきリースリングを紹介しよう。
「シュロス・ヨハニスベルク グリューンラック シュペートレーゼ 2020」
リースリングという品種はそのブドウに含まれるTDNという物質が関係してペトロール香(一般的にガソリンのような香り)が感じられるが、リースリングと聞いてあの香りが苦手という人にも、シュロス・ヨハニスベルクのテロワールの影響からTDNの含有量が少なく、ペトロール香は少ないので、オススメの点でもある。味わいは非常に芳醇で、酸味も高い。洗練されたワイン。リースリングは飲み疲れない品種だが、とくにこのグリューンラック シュペートレーゼはとくに飲みやすく、いつまでも飲み続けられそうな飲み疲れとは無縁のワイン。リースリングのなかでも特別な1本。もちろん金額的にも特別感はあるが、最高のリースリングの1つと表現できるワインなので、ぜひぜひ、飲んでみてほしい。また、このワイン以外にも辛口の「シュロス・ヨハニスベルク ジルバーラック トロッケン」もオススメだ。
品種/リースリング100%
参考価格/10,010円(税抜)