お酒を自由に楽しみ、セレンディピティな出会いを

WINE

ヴィーニョ・ヴェルデの現在地 vol.01

世界が注目しているワイン産地、それは「ヴィーニョ・ヴェルデ」

「ヴィーニョ・ヴェルデ」のいまを知らないあなたへ

ヴィーニョ・ヴェルデはポルトガルワイン産地の名前である。ワインに造詣の深い方でもヴィーニョ・ヴェルデワインと言われると微発泡の爽やかな白ワイン。そんなワインとばかり思っている方が多いのではないだろうか? しかし、ロゼもあれば赤もあり、白でもまったく炭酸ガスを含まない、ボディのしっかりしたタイプまである。その多様性に驚かれるであろう。

「ヴィーニョ・ヴェルデ」というワインとは?

ヴィーニョ·ヴェルデはポルトガル北西部に位置するこのワイン産地が、草木の生い茂る自然が豊かな緑に恵まれた土地。北はミーニョ川を挟んでスペイン国境に接し、南はドウロ川の流域まで、西には大西洋が広がり、東をペネダ、ジェレス、カブレイラ、マラォンなどの山脈で遮られたエリア。DOCヴィーニョ·ヴェルデはこの地方にすっぽりと収まる。

ポルトガルワインはローマ帝国時代にワイン造りが広がり2,200 年にもおよぶ歴史をもち、ヨーロッパ諸国に輸出された最初のポルトガル産ワインとみなされているのがヴィーニョ·ヴェルデ。現在、17,269ヘクタールのブドウ畑が広がり、年に9,600万リットルのワインが生産される。マデイラやポルトなどの酒精強化ワインを除けば、ポルトガルから輸出されるワインの40パーセントを占めるのがヴィーニョ・ヴェルデなのだ。

大西洋に面したこの地方はおおむね海洋性気候の影響下にあるが、海に向かって流れる何本もの川が独特の微気候を生み出す。特徴的なのは年間1,200ミリに達する降雨量で、 この豊富な水が緑豊かな大地を育んでいる。もっとも雨は10月から翌年 4月までの半年に集中し、ブドウの生育期に降ることは少ない。

畑の土壌は大部分が風化した花崗岩。ポルトガル北西部では建材にも花崗岩がよく使われている。しかし場所によっては片岩(シスト)の土壌が見られ、河川が運んできた丸石に覆われた畑もある。そうした自然条件の違いから、DOCヴィーニョ·ヴェルデはさらに9つのサブリージョンに分かれている。

栽培されるブドウ品種は多岐にわたる。ヴィーニョ·ヴェルデの8割以上が白ワインで、ロウレイロを主体にアリント、トラジャドゥラのブレンドが伝統的。一方、北部のモンサォン·メルガッソではアルヴァリーニョが主流で、多くの人がヴィーニョ·ヴェルデと聞いて思い浮かぶのは、微発泡の軽やかな白ワインだろう。この炭酸ガスはワインを造った後から吹き込んだもので、規定では気圧が1バール以下でなくてはならないと規定されている。しかし近年では非発泡性の、ボディがよりしっかりした白も増えている。また数の上では少数だが、黒品種のエシュパデイロから造られるロゼや、ヴィニャオンから造られる独特の赤もある。ワイン産地ヴィーニョ・ヴェルデには、じつに多様性に富んだワインが造られている。

ヴィーニョ·ヴェルデの主なブドウ品種

アルヴァリーニョ/白品種:強烈なアロマは複雑でピーチ、パッションフルーツ、ライチなどフルーティーな特徴と若いワインには洋ナシやメロンのニュアンスも。熟成が進むと、ヘーゼルナッツ、クルミ、蜂蜜へと変化する。アルコール度数が高く、複雑味がある。

ロウレイロ/白品種:エレガントなアロマ、柑橘類や青リンゴのフルーティーさやフリージアやバラ、ジャスミンを思わせるフローラルがある。最も多く植えられている。

アヴェッソ白品種:フルーティー、ナッツとフローラルを組み合わせた香り。

アリント/白品種:フルーティー、ナッツとフローラルを組み合わせた香り。熟したリンゴとナシのようなフルーティーからフローラルまでの豊かな香り。

トラジャドゥラ/白品種:リンゴ、ナシ、ピーチの繊細な香り。 酸味が少ない。

ヴィニャオン/赤品種:野生の木苺とブドウ独特の香りで、ガーネットレッドの濃い色。最も植えられている。

エスパデイロ/赤い果実の香りで、色はピンクから淡いピンク。ロゼワインに使われることが多い。

「calme」オーナー・ソムリエの佐野敏高さん

次回は、ヴィーニョ・ヴェルデに造詣も深い池尻大橋にあるフレンチビストロ「カルム」の佐野敏高氏にヴィーニョ・ヴェルデをお家での楽しみ方を合わせる料理からレシピも教えてもらいます。最後に、その佐野氏に今、ヴェーニュ・ヴェルデが注目される〈わけ〉を聞いてみました
「ヴィーニョ・ヴェルデは日本の和洋折衷の食卓にぴったりと寄り添うための多様性をもったワインが多いからだと思います。それは、当初は炭酸ガスを有した気兼ねないものしか知られていませんでしたが、生産者さんのイノヴェーティブ溢れる表現、土地の個性や葡萄の可能性を信じてワイン造りをしている生産者さんのワインが日本で紹介されるようになってきたことも要因のひとつでしょうか。
ユーラシア大陸の東端の国である日本、西端の国であるポルトガル、お互いに海に面した特徴をもつので食卓にのぼる食材なども似ています。

特にヴィーニョ・ヴェルデは海よりの影響を受ける地域、盆地のように山の影響を受ける地域の特性を合わせもっています。まるで日本と同じようではないですか。
ブドウ品種の個性も特徴だと思います。単一品種で作られるもの、ブレンドをして作られるもの、さまざまな個性をもち選択する幅が広がったため、溢れんばかりの魅力が解放され、キリッと冷やして美味しいワインを連想するヴィーニョ・ヴェルデを入り口とし、複雑でさまざまな世界へと足を踏み入れることのできる個性溢れるワイン産地というイメージに変わってきたのではないでしょうか」

次回はVol.02、「ヴィーニョ・ヴェルデに合う料理も佐野さんに提案いただきます」

RELATED

PAGE TOP