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WINE

「オルネッライア&オーパス・ワンVS???」、ブラインド試飲会で光った実力派ワインはコレだった!

取材・文/山本 ジョー 写真/山本育子


10月某日、ワイン輸入元の三国ワインが取り扱うプレミアムワインブランドと世界の銘醸ワインをブラインド・テイスティングにてそれぞれのワインが持つポテンシャルを体感するというイベントをWhy not?マガジンが共催し、1部は酒販店、レストラン従事者などプロ向けに、第二部は一般読者・消費者向けに分けて開催された。ブランド力やイメージの刷り込み、販売価格に頼れないブラインド・テイスティングはとても興味深い結果と再認識の場となった。

第一部:「世界の銘醸ワイン9本を、プロと共にブラインド試飲! それぞれの実力やいかに!?」を読む

【第二部:6種の銘醸ワインのブラインドテイスティングイベント】

10月16日、Why not?読者をはじめワインをよく知る猛者が虎ノ門ヒルズの人気レストラン「W TRANOMON the market」に集結。総額約20万(!)の銘醸ワイン6本をブラインド試飲できる特別なイベントに参加するためだ。2本のみ事前に銘柄は知らされていたものの、全6本のうちどの順番で出されるかは不明、ほかの4銘柄もナイショのまま。はてさて、参加者たちは偉大なワインをどうジャッジしたのだろう?

「偉大なワイン」との表現をよく聞くが、とどのつまり「偉大」ってなんだ?―――銘醸ワインをブラインド試飲すると、あらためてその問いをぶつけられる。ワイン経験値の高い人は、今まで「これが偉大なワインですよ」と言われて飲み、おおまかな共通項を把握してきたはず。香りは複雑で強く、味は凝縮感があって、余韻も長くて、唯一無二の個性があって……その意味では、今回のワイン会に登場したワイン6本はすべて偉大だ。

と、ここで先に全銘柄をオープンしてしまおう。

左から
●試飲ワイン1
オルネッライア オルネッライア 2019
●試飲ワイン2
C.V.N.E. リオハ クネ レアル・デ・アスア 2019
●試飲ワイン3
C.V.N.E. リオハ インペリアル グラン・レセルバ 2016
●試飲ワイン4
オーパス・ワン ワイナリー オーパスワン 2019
●試飲ワイン5
ドメーヌ・アラン・ブリュモン シャトー・モンテュス XL 2019
●試飲ワイン6
ドメーヌ・アラン・ブリュモン シャトー・モンテュス ラ・ティル 2011

試飲順はタイプや値段によるものでなく、完全にランダム。「ど~せ値段順で、最後に最高額の濃厚ワインが出るんでしょ~」と裏読みした人は残念! 先入観を完全に取っ払えるよう、当日の司会進行役を務めたワインディレクターの田邉公一さんが決めた順番だった。

ブラインド比較試飲にしたのは、偉大なワインとはなにかを追求するため。先入観や固定観念から距離を置ける試飲スタイルから、「ワインのポテンシャルというものを少しでも知っていただければ」と田邉さんは語っていた。

超有名なオルネッライアやオーパス・ワンが登場すると事前告知されていたので、正直なところ、その2銘柄に惹かれて参加を希望した人が多かった。ブラインド試飲時に「これがオルネライアだ!」と見事当てた人も少なくない。とはいえ、より面白い味覚体験を得られたのは、あとの4銘柄ではなかったか。銘柄を予想する(実際は「予想できたと思ってる」だけで、まったく違う銘柄のことも多々あるのだけれど)と、人はそこで味の探求を止めがちだ。馴染のない偉大なワインに出合うと、つかみどころのない正体を暴こうと、五感をフル稼働させて細かく特徴を掴み取っていく。
あとの4本は、南仏のマディラン2銘柄と、スペインのリオハ2銘柄。マディランもリオハも産地としては有名だが、ボルドーの風景が脳をよぎる繊細なマディラン、圧倒的な密度を誇るリオハの登場によって、参加者は思いのほか翻弄されたに違いない。

ブラインド試飲時は誰もが目の前のグラスに集中。しかし、堅苦しくないイベントなので、同じテーブルに居合わせた人とは「オーパス・ワンは何番のワインだと思います?」「こんなに赤ワインばかり飲むと、早くお肉を食べたくなる(笑)」などなど自由なコメントが行き交っていた。

さて、試飲タイムの後に全ワインの銘柄が明かされ、参加者が投票した「お好みの上位3種」の集計結果1~3位も即時発表された。人気1位に輝いたオルネライアに続き、3位のオーパス・ワンを抑えて堂々2位となったのは、「シャトー・モンテュス ラ・ティル」。マディランとしては高額な3万3千円ながら、参考価格7万円のオーパス・ワンを超えてきたとあれば、ポテンシャルは推して知るべし。

参加者の声(左から):「オーパス・ワンは訪問したことがあります。オーパス・ワンとオルネッライア以外で気になったワインは、シャトー・モンテュス ラ・ティル。味わいに奥行きがあり、おいしかったです」(塩川彩さん)/「ワインバー『ナイトフォークス』を経営して8年。オーパス・ワンはさすがにエレガントでしたね。そしてシャトー・モンテュス ラ・ティルは、ナゾの激しいワイン(笑)! 2011年産でこのフレッシュさは驚きです」(川原真紀子さん)/「ワインの資格取得を目指し、机上の学習ばかりでワインの経験が少ない人には、このような試飲の機会がとても貴重。私は2022年にワインエキスパートを取得しましたが、イベント参加は初。今回は楽しめて、また勉強になりました」(ゆうきさん)

ドメーヌ・アラン・ブリュモンに一週間滞在し、オーナーのブリュモンさんと一緒に畑を周った経験のある田邉さん曰く、
「アラン・ブリュモンは、ボルドーの五大シャトーに匹敵するワインを目指してきました。シャトー・モンテュスのワインはどちらも、アラン・ブリュモンらしいエネルギーに満ち溢れています。とくにラ・ティルの畑は斜面に大きな砂利石土壌が広がり、寒暖の差も大きい特別な区画で、造られるワインは豊かな酸が特徴的。デキャンタを使用し、ボルドーグラスで味わいたいマディランなのです」

C.V.N.E.(クネ)のリオハ2銘柄についても、田邉さんはその実力を高く買いつつ、リオハ人気が伸び悩んでいる日本市場を憂いている。リオハはワインを勉強した人なら誰でも知っているはずが、「クラシック過ぎる」イメージが足を引っ張っているとか。
「そもそも、私がコンビニエンスストアで発見してSNSで発信し、爆発的な売上を見せたワインもスペイン産の熟成ワイン。コストパフォーマンスのいい赤ワインといえば、やはりスペイン産が抜きん出ていますよね。なかでもC.V.N.E.は、私が講師を務めるワインスクールでたびたび採用したメーカー。リオハらしさを伝えやすいし、品質が高くて安定感があるからです。なによりコストパフォーマンスが素晴らしく、人にオススメもしやすい」(田邉さん)

ブラインド試飲の後は、試飲用ワインとは別に三国ワインから特別提供された「ロジャー・グラート カバ ロゼ・ブリュット」「ラ・バル アルバリーニョ」で、あらためて乾杯! リラックスしたところでお待ちかね、「W TRANOMON the market」の彩り豊かなカリフォルニア料理をビュッフェ形式で堪能した。赤ワインとの相性抜群かつヘルシーな総菜で、皆大喜び。

ブラインド試飲は、自分なりの偉大なワインを再確認し、新たに発見もできるまたとない機会。さて、この日の試飲イベントでアラン・ブリュモンとクネの実力や魅力に気づいてしまった人は……ご愁傷様(?!)、ワインショップで買いたいワインの選択肢が増え、今まで以上に悶えてしまうこと必至!

最後に余談ですが、ブラインド試飲の出題者側の人たちって、銘柄を明かす瞬間、なぜかニヤけちゃうんですよねぇ。楽しくってしょうがないらしい。



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山本ジョー

ライター。2000年よりワインや食にまつわるテキスト制作を請け負ってきたが、ときおりタレント本や鉄道本にも携わる。 畑で細々と野菜を作り、猟師から獲物を分けてもらうカントリーライフを堪能中。 好きなものは旅、犬、カジュアル着物。 小型船舶免許1級を取得して以来、船の操縦経験ゼロ歴を更新し続ける「なんちゃって船長」でもある。

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