お酒を自由に楽しみ、セレンディピティな出会いを

WINE

世界の銘醸ワイン9本を、プロと共にブラインド試飲! それぞれの実力やいかに!?

取材・文/名越 康子

10月某日、ワイン輸入元の三国ワインが取り扱うプレミアムワインブランドと世界の銘醸ワインをブラインド・テイスティングにてそれぞれのワインが持つポテンシャルを体感するというイベントをWhy not?マガジンが共催し、1部は酒販店、レストラン従事者などプロ向けに、第二部は一般読者・消費者向けに分けて開催された。ブランド力やイメージの刷り込み、販売価格に頼れないブラインド・テイスティングはとても興味深い結果と再認識の場となった。

第二部:「オルネッライア&オーパス・ワンVS???」、ブラインド試飲会で光った実力派ワインはコレだった!」を読む

【第一部:9種の銘醸ワインのブラインドテイスティングイベント】

ワインのブラインド試飲。テレビでも時々ありますよね。銘柄を隠してワインを味見して、産地やブドウ品種、収穫年などを想像し、評価までしてしまう試みです。10月半ばに行われたのは、ブラインド試飲セミナー。5名のプロが世界各国からの銘醸ワインと言われる赤ワイン9本をブラインド試飲し、参加者である首都圏でワインを取り扱う人々の前で語り合うというもの。登壇者も参加者も、もちろん主催者である三国ワインの方々も、場所を借りた虎ノ門ヒルズの「W TRANOMON the market」の皆さんも、そしてこの会をお手伝いしたWhynot?サイドも、ドキドキしながらその進行を見守りました。
さて、一体テイスターの皆さんはどのようなコメントをしたのでしょうか!?

今回テイスターとして登壇いただいた5名の方々は画像左から中村僚我さん(フランス料理レストラン ロオジエ ヘッドソムリエ)、メインスピーカーで進行役はワインディレクターの田邉公一さん、近藤佑哉さん(フランス料理レストラン レカン レストラン事業部総支配人 エグゼクティブ ソムリエ)、市村暢央さん(前・フランス料理レストラン『カンテサンス』チーフソムリエ、現・高級マグロを中心とした鮮魚店で飲食店も経営 やま幸(やまゆき)取締役)、菊池貴行さん(スペイン料理レストラン ティンガナ マネージャー・シェフソムリエ)。と、どなたも日本を代表するソムリエのみなさん。メインスピーカーの田邉さんだけが銘柄や順番をご存知の状態で、開催です。

三国ワインのカントリーマネージャー、オリヴィエ・モレノ氏

ちなみにこの会の目的について、三国ワインのカントリーマネージャー、オリヴィエ・モレノ氏がこのように説明されました。
「世界の偉大なワインと、三国ワインが取り扱っているワインの職人技、そして品質をブラインドで試飲していただくことで、ボルドーをはじめとした世界的に有名な銘柄だけでなく他にも偉大なワインもあることに気がついてもらい、それぞれのワインの素晴らしさを見つけていただきたい」。
以下、試飲した順番に銘柄とヴィンテージも記します(敬称略)。

当日、完全ブラインドで試飲したワイン。左から(試飲順)
1)「アルヴァヴィーヴァ アルマヴィーヴァ 2019」
2)「ドメーヌ・アラン・ブリュモン シャトー・モンテュス XL 2016」
3)「オーパス・ワン ワイナリー オーパスワン2019」
4)「C.V.N.E.(クネ) リオハ インペリアル グラン・レセルバ 2016」
5)「ポール・ジャブレ・エネ エルミタージュ ラ・シャペル 2015」
6)「C.V.N.E.(クネ)リオハ レアル・デ・アスア 2019」
7)「ドメーヌ・アラン・ブリュモン シャトー・モンテュス ラ・ティル 2011」
8)「オルネッライア オルネッライア 2019」
9)「シャトー・カロン・セギュール 2012」

試飲ワイン1 アルヴァヴィーヴァ アルマヴィーヴァ 2019
近藤:ブドウ由来のアントシアニンはそれほど強くはなく、グリセリンは豊かで、温暖な産地だと予想。ボイズンベリー、ブルーベリー、カシスなどの赤紫色の果実の香り。ピラジンやスパイス、赤身の肉類のニュアンスも。熱、あるいは暖かさを感じる。しなやかなストラクチャーで、柔らか。背骨が通っているというよりは、滑らか。温暖な産地、チリのカベルネ・ソーヴィニヨンでは?それにカルメネールも少しブレンドされている、と考えるのもありかも。例えば、セーニャ2018年という可能性も。

市村:チリの可能性は高く、カベルネ・ソーヴィニヨン、もしくはカベルネ・フランがブレンドされているかも。産地はマイポ・ヴァレー? 
Whynot?編集部:しょっぱなから産地とブドウ品種をピッタリ当ててくるなんて!?さすがですよね〜。チリのマイポ・ヴァレー産、カベルネ・ソーヴィニヨン主体で、カルメネール、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、メルロのブレンドです!)

試飲ワイン2 ドメーヌ・アラン・ブリュモン シャトー・モンテュス XL 2016

中村:ワイルドなイメージ。バルサミックな香りがあり、大きめの樽で熟成させている可能性。果実のトーンが明るく、ベリー類の香りも。引き締まった酸味があり、砂のようなサラサラとしたタンニン。ワイルド感があり、旧世界産ではないかと想像する。例えば、イタリアのティニャネッロなど、サンジョヴェーゼにボルドー品種をブレンドした銘柄で、少し熟成感があるため、ヴィンテージは2018年ぐらい?
菊池:クラシックなトーンがあり、スペイン産の可能性も。ただ、赤いベリー系果実と豊かなタンニンの加減から、サンジョヴェーゼかテンプラニーリョか迷うところ。
Whynot?編集部: こちらはフランス南西地方、マディランの上級ワイン。この産地を一躍世界舞台に押し上げた、アラン・ブリュモン氏のドメーヌが造る限定3,000本の特別キュヴェ。800ℓの中ぐらいの大きさの新樽で40か月熟成。ブドウ品種は、強いタンニンで知られるタナ。山を越えればスペインに近い位置で、当然イタリアもご近所です。ワイルド&クラシック、まさにおっしゃる通り! 余談で少し古い情報ですが、シャトー・モンテュスのワインはあのトム・クルーズさんが大のお気に入りで、プライヴェート・ジェットに乗ってわざわざマディランまで来て箱買いされている、とブリュモン氏から聞いたことがあります)。

試飲ワイン3 オーパス・ワン ワイナリー オーパスワン2019 

近藤:まだ縁にピンクが混じっている若々しい色合い。熟した果実を潰したような清涼感あるトーンで、マジョラムなどハーブのニュアンス、ユーカリ、ブラックペッパーなどの香り。アタックはエレガントで酸とタンニンのストラクチャーがしっかりとして、余韻は甘いスパイスのニュアンス。アメリカンオークの新樽も用いているのか。例えば、南オーストラリア州の冷涼産地アデレードヒルズのGSM(グルナッシュ、シラーズ、ムールヴェードルのブレンド)など、温暖ながら酸味をキープしているのが重要。まさにプレステージクラスで、価格は3万円前後するのでは?
市村:一定以上のアルコール度数が感じられながらレベルの高い酸がある、新世界のワイン。ミントやユーカリなどの清涼感が感じられる。答えがまとまらないが、標高の高いカリフォルニア、あるいはオーストラリア生まれでは?中村:エレガンスも感じられる。ボルドーのサンテステフ、シャトー・モンローズ2018年。
菊池:最後のタンニンのストラクチャーから、ボルドー、シャトー・タルボの最近のヴィンテージ。
近藤:余韻の乾いたニュアンスから、ボルドーのポーイヤック、シャトー・ランシュ・バージュを予想。
Whynot?編集部:皆さん3大陸で迷われましたが、凝縮感やバランス良い香味、きめ細やかで豊かなタンニンから、いずれにせよプレステージクラスだとの判断で落ち着きましたね。)

試飲ワイン4 C.V.N.E.(クネ) リオハ インペリアル グラン・レセルバ 2016

中村:粒子がとても細かいが豊かなタンニンで、酸もしっかりと下支えしている。少しココナッツやカルダモンも香る。スペインでは?
菊池:日照量は感じるが暑くないヴィンテージ。樽のトーストもあまり強くない。収斂性もしっかりしている。テンプラニーリョだけではなく、グラシアーノもブレンドしている、リオハ・アルタの標高高い畑で、ヴィンテージは2019年?
近藤:スパインらしい素朴さが感じられる。リフトアップされたハリのある香味。テンプラニーリョにグラシアーノもブレンドした、2017年か2018年ぐらい。市村:なめし革やタバコのニュアンスから、テンプラニーリョ主体でグラシアーノもブレンドした、グラン・レセルバで収穫年は2016。
Whynot?:皆さんの意見を総合すると、まさに大正解!クネの限定品にして長期熟成可能なインペリアル グラン・レセルバ2016年は、産地はリオハ・アルタ。テンプラニーリョ85%に、酸が豊かなことで知られるグラシアーノ10%、マスエロ5%のブレンド。この2016年はジェームス・サックリングから98点、ワイン・エンジュージアストから96点、ワイン・アドヴォケイトとデキャンターから95点、ティム・アトキンMWから94点をゲットしている逸品です!)

試飲ワイン5 ポール・ジャブレ・エネ エルミタージュ ラ・シャペル 2015

近藤:まだ閉じていて香りが取りにくいけれど、プルーン、ブラックチェリー、ブラックベリー、少しハーバルな、タイムのような清涼感がある。エレガントな味わい。酸のフレッシュさがアタックから余韻までエレガントに感じさせ、タンニンも溶け込み始めている。ダスティな印象のタンニンから、ナパ・ヴァレーのスタッグスリープを想起。2020年。
市村:ニューワールドの派手さは感じ取りにくい。香りもわかりやすく、タンニンの収斂性はこなれ始めている。カベルネ・ソーヴィニヨンというよりは、メルロ。クラシックなスタイル。サンテミリオンのシャトー・アンジェリュス2018年?
菊池:オーパスワン2015年。
中村:オーパスワン2018年。品質の高いブドウを用いている。タンニンに甘みも感じられ、アルコール度数も高めの印象。 (Whynot?:コート・デュ・ローヌ北部、エルミタージュの中でも最高峰の一つとされる銘柄。ブドウ品種はシラーですが、その凝縮感や複雑性、ストラクチャーの強さからある意味でシラーという品種を超えたワインであると言えるのかもしれませんね。)

試飲ワイン6 C.V.N.E.(クネ)リオハ レアル・デ・アスア 2019 

中村:ディルのようなドライハーブの香りとがっしりとした酸から、スペイン、リオハの2019年を予想。
菊池:タンニンが充実し、酸もしっかりしている。スペインのリオハ・アラベサ寄りの産地かもしれない。ジャムや鉄分を思わせる香りも。テンプラニーリョ的な要素。
近藤:スペインのリオハ、アルゼンチン産マルベック、オーストラリアのクナワラ、あるいは、カリフォルニアのリッジ モンテベッロ(カベルネ・ソーヴィニヨン主体)。
市村:鉄っぽさやミネラル感、甘い香りから、オーストラリアのペンフォールズのシラーズ?(Whynot?:産地もヴィンテージもピタッときましたね!リオハの中でも、リオハ・アルタの標高600m近い高地で育つテンプラニーリョ100%。こちらのキュヴェは特別な自社畑のブドウだけを用い、フレンチオークの新樽で発酵、そしてフレンチオークの新旧樽で熟成されたもの。リオハ・アルタのワイナリーとして、初めてラ・ブラス・ボルドー経由で世界に販売されたワインです。今回登場のオーパスワンやオルネッライアも同様に、ボルドー経由で販売されています。まさに洗練された香味ですね)

試飲ワイン7 ドメーヌ・アラン・ブリュモン シャトー・モンテュス ラ・ティル 2011 

近藤:スパイシーで、中国茶、鉄っぽさなどが香り、上品な味わい。フレッシュな酸味のトーンとタンジーなタンニン。シャトー・モンテュスの上級キュヴェ? 
市村:落ち着きがあり、ドライハーブや黒胡椒も香り、バランス良い。ボルドー、ポーイヤックの2016年? 
中村:ナパ・ヴァレーも思い浮かべたけれど、色素が強いのでやっぱりシャトー・モンテュスかもしれない。ただ、X Lなどのプレステージキュヴェではないかと。2018年ぐらい?
菊池:確かにブドウ品種はタナではないかとも思うが、もし別の品種ならシラーズという可能性も。 
Whynot?編集部:皆さんさすがですね! 田邊さんはこの超スペシャルキュヴェが生まれる畑を歩かれたそうです。大きな石がゴロゴロとしている急斜面の畑で、収穫量もとても低く長期熟成可能性のポテンシャルも素晴らしいとのこと。だって2011年、つまりすでに10年以上経過しているのにそれほど熟成感は現れず、全ての要素が高いレベルで均衡しているのですから!でも、日本に入荷している数量はやっぱり少ないようです。)


試飲ワイン8 オルネッライア オルネッライア 2019
中村:黒鉛のようなニュアンスとアタックの甘みから、ボルドー右岸を想起。シャトー・フィジャックの2015年?
菊池:スパイスの香りは多くなく、しなやかさや柔らかさもありメルロが少し多めに感じるので、ボルドー右岸の暑過ぎないヴィンテージ。
近藤:シャトー・プティ・ヴィラージュやシャトー・フィジャックの2019年?
市村:ボルドー右岸でカベルネ・フランが多め。右岸、サンテミリオンのカルトワイン、ル・ドーム2019年。
Whynot?編集部:イタリアのボルゲリ地区、オルネッライア2019年は、カベルネ・ソーヴィニヨン62%、メルロ31%、プティ・ヴェルド4%、カベルネ・フラン3%のブレンド。ボルドーよりもブドウの熟度が高いため、ボルドー右岸という予想も頷けますね。国際的な味わいです。)

試飲ワイン9 シャトー・カロン・セギュール 2012
近藤:少し発展的で穏やかなニュアンス。ほど良い熟成感があり、セミドライな赤い果実、ドライハーブ、ダージリン、ウーロン茶、マッシュルーム、ミネラル、土などが感じられる香り。味わいも練れている。酸味も果実味も多層的な味わいを形成し、落ち着いた酸味が余韻の長さにつながっている。落ち葉も思わせる。クラシックな産地で、ボルドー左岸。シャトー・レオヴィル・ラスカーズのようなきれいな酸。少し涼しいヴィンテージ? 
市村:肉っぽさ、なめし革、赤い香辛料の香り。色合いもエッジがオレンジがかかり始めている。それでもストラクチャーがしっかりとした味わいで、ボルドーではなくマディランのタナかも。シャトー・モンテュスなら「ラ・ティル」の可能性もあるけれど、割当て制の数量限定品なのでまさか今日は出てこないと思うけれど。ポール・ジャブレのエルミタージュ、という線もあるかも。
中村:熟成感があり、トリュフやマッシュルーム、秋を思わせる香り。クラシックで、なめし革、干し肉の香りも。シラーもあり得るかもしれない。シャプティエのエルミタージュ2012年?
菊池:ボルドーも思い浮かべたけれど、もう少し南の産地かもしれないとも。シラーならばもう少しスパイス感やセクシーさが出ると思うので、マディランのタナでは? (Whynot?:皆さんやはり素晴らしいコメントですね!熟成した様子がきれいに表現されていてさすがです。でもやはり7番のシャトー・モンテュス ラ・ティルが2011年で9万よりも1年古いにも関わらず、コメントがもっと若々しいワインであることを示しているので、ラ・ティルのポテンシャルは本当にすごいですね!)

田邉公一さん

田邊さんの素晴らしい進行とガイドにより、皆さんから多くのコメントを引き出していただきました。ちなみに、登壇者の皆さんの合計点から付けたランキングは以下の通りです。そして何と、会場の参加者の皆さんに好みの1、2、3位を付けてもらったところ、同じ結果となりました。
1位 オルネッライア オルネッライア 2019
2位 ポール・ジャブレ・エネ エルミタージュ ラ・シャペル 2015 
3位 シャトー・カロン・セギュール 2012
4位 ドメーヌ・アラン・ブリュモン シャトー・モンテュス ラ・ティル 2011
5位 オーパス・ワン ワイナリー オーパス・ワン 2019 
6位 C.V.N.E.(クネ)リオハ レアル・デ・アスア 2019

世界の銘醸ワインの中で、フランス南西地方マディランのシャトー・モンテュス、スパインはリオハのクネがしっかり高評価を得られているという結果になりました。

有名産地や有名銘柄は、ある意味で選びやすいのは事実です。わかりやすいので、例えば贈答品としても使いやすいと思います。ただ、ワインの楽しみの一つに発見する喜びもあると思います。ぜひ色々と試してみてください!

RELATED

PAGE TOP