昨年から今年にかけてリニューアルや新規オープンした広尾・奥渋・麻布十番のワインショップが個性的でおもしろい。少しでもその個性を伝えたく、取材にあたり各店舗に一つのお題を出して応えてもらいました。そのお題は「美味しいのはあたりまえ、“ワインのエチケット”も印象に残るオススメワインの3本」。各店舗のセレクトの妙はそれぞれのお店の、ソムリエのキャラクターがでていますよ。 ピノ・ノワールとシャルドネに特化というコンセプトショップの登場だ。
広尾編♯02 THE CELLAR Hiroo
高級住宅地・広尾の住人ご用達、ピノ・ノワール&シャルドネ専門店
廉価ワインの扱い数は膨大、かつ超高級ワインもギリギリに価格を抑えてくれるワインショップ「カーヴ・ド・リラックス」が、満を持して広尾に「THE CELLAR Hiroo」を展開。しかも、ピノ・ノワールとシャルドネに特化という、過去に前例のないコンセプトだ。幅広いセレクションを強みとするカーヴ・ド・リラックスが、まさかの品種縛りを仕掛けた狙いとは? 2022年10月のオープン以来、広尾住人たちが足しげく通う名店となった背景を覗いてみよう。
取材・文/山本ジョー 写真/山本育子
広尾の有栖川宮記念公園すぐそばに佇む、モダンフレンチな外観のワインショップ。
全面ガラスのエントランスと高い天井のおかげで開放的な印象だが、実際は20坪とこじんまりした面積だ。
今や広尾はワインショップ激戦区であり、店から数分歩けばほかの大手や老舗のワインショップ数軒にたどり着いてしまう。
とはいえ、20坪の店で世界中のワインを幅広く網羅するのは正直、より広い床面積を誇る他店にかなわない。
しかも、過去にはビジネス街への出店ばかりで、広尾店が初の住宅地進出。
そこで、カーヴ・ド・リラックスは「まだこの地域にないワインショップ」を産み出すべく、戦略を練った。
(左より)優しい物腰の店長・松沢直輝さん、統括マネージャー・人見裕介さん、ワイン業界では珍しい(?)体育会系の爽やかスタッフ・時田紘毅さん。
「コンセプトをしっかり定めることにしました。イタリアワイン専門か、ナチュール専門か、などいろいろな案も出たのですが、品種にこだわるほうがお客様に刺さるのでは、との結論に至ったのです」
と経緯を語るのは、カーヴ・ド・リラックスの統括マネージャーである人見裕介さん。
そうして、「ピノ・ノワールとシャルドネに特化」という大胆なアイデアに賭けたのだった。
店内に並ぶ常時500種類ほどのワインを眺めれば、ブルゴーニュ産が4割、シャンパーニュが1割程度を占めつつ、あとは世界各地のワインを網羅。
タイプも千差万別で、決して品種だけで味わいの傾向を一括りにはできないことが分かる。
マニアックなお客様ばかりかと思いきや、9割以上が近隣の住民だとか。
価格は1,000円台から揃えられているので、普段使いのワインを買って帰る20代の男女も少なくない。
品種は限定されているものの、品揃えが常に入れ替わるのも強みのひとつだ。
人見さん曰く、
「近隣の他店は自社輸入をされているのに比べ、当社は自社輸入をしていません。つまり裏を返せば、国内で調達できるアイテムのなかで自由に“良いとこどり”ができるのです。ただ、常にテイスティングを重ね、最新情報を入手し続けなければならないですが……」。
円安や供給量不足により、とくにブルゴーニュワインの価格が高騰する昨今、無名の生産者や産地でもクオリティが高いものをピックアップする努力を怠らないという。
さらにもうひとつ、他の店にはないTHE CELLAR Hirooならではのサービスがある。
「うち、ペット可なんです。広尾にお住まいの方はペット連れが多い。散歩がてらパッと立ち寄り、ワインを買うことができます」(人見さん)
入口脇には、ピッコロサイズのシャンパーニュやジュースなどをいただけるテーブルセットが設置され、犬の散歩途中で気兼ねなく一休みしやすい。
また、店内奥の試飲スペースでは、随時入れ替わる赤2種、白2種(2種1,650円、4種3,300円)、泡1種(1,650円)をリーデルのグラスでゆったり飲むことができる。
ときに10名程度のイベントやセミナーが開催されるこちらは、ディナー前の待ち合わせにも活用したくなる空間だ。
<美味しいのは当たり前! エチケット話でも場を盛り上げるオススメはズバリ、この3本!>
画像左から「フリードリッヒ・ベッカー/キュヴェ・サロメ」「ブラインド・コーナー/シャルドネ アリゴテ 2020」「ソーン・ドーターズ/コッパー・ポット ピノ・ノワール 2020」
フリードリッヒ・ベッカー/キュヴェ・サロメ
ドイツ産ピノ・ノワールを世界最高級へ押し上げたフリードリッヒ・ベッカー。ラベルにはイソップ物語「酸っぱいブドウ」の主人公、キツネの姿が。冷涼な気候で赤ワイン造りを手掛け始めた頃、「ブドウの糖度が上がらず酸っぱいワインになるはず」と周囲に危惧された過去を、この物語に投影したユーモアを見せる。赤ワイン以外も秀逸で、このスパークリングは「熟成期間が長く泡立ちがクリーミー。完成度が高いです」(人見さん)。
ドイツ/ファルツ
品種/シャルドネ
5,500円(税込)
ブラインド・コーナー/シャルドネ アリゴテ 2020
オーストラリアでは果実味豊かで樽の風味も強い濃厚な白ワインをよく見かけるが、人見さんが「オーストラリア産のなかでもキレイな飲み口」と推すのがコチラ。シャルドネとアリゴテのブレンドは非常に珍しく、「シャルドネのボリュームあるフルーツ感に、アリゴテの酸味が加わることで、飲み疲れしないワインになっています」(人見さん)。
オーストラリア/マーガレット・リヴァー
品種/シャルドネ、アリゴテ
4,180円(税込)
ソーン・ドーターズ/コッパー・ポット ピノ・ノワール 2020
ラベルに描かれた鍋に、造り手からの「食事と合わせて楽しんで」とのメッセージが込められている、ミディアム・ボディの赤ワイン。料理好きな友人へのギフトにも最適だ。ともすれば酸が鋭くなりがちなピノ・ノワールのワインながら、こちらは「酸がやわらかで赤い果実の風味もあり、気軽に飲めるタイプです。ピノ・ノワール入門編として最適」(人見さん)。グラスに注いだ瞬間からシンプルで分かりやすい香りが広がる点も、ビギナーにやさしく万人受けする。
南アフリカ/ウェスタン・ケープ
品種/ピノ・ノワール
4,180円(税込)
SHOP DATA
106-0047東京都港区南麻布5-16-6
03-5422-7767
11:00~20:00 (試飲スペースは~19:30)
https://www.instagram.com/wineshop_thecellar
休 年末年始
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